米Mission Barnsが培養脂肪のFDA認可を取得、USDAの認可を待って数カ月以内に市場化へ

独自のバイオリアクターで動物性脂肪を培養している米国のMission Barnsが、自社製品の安全性について米国食品医薬品局(FDA)からの「異議なし」レターを受領。販売開始にあと一歩のところまで近づき、市場投入の具体的な計画を明かしました。
小売り・外食業界のパートナーを確保
FDAはレターの中で、Mission Barnsの培養豚脂肪を使用した製品が「同等の食品と同程度に安全である」とした結論について、これ以上の異議はないと述べました。
米国内で細胞培養製品の販売が認められるには、FDAの安全性審査に加えて、米国農務省(USDA)からの表示認証と、生産施設に対する検査証明書(GOI)の取得が必要。最終ステップとなるこれらの審査手続きを進め、数カ月以内に市場に導入できる見込みです。
同社初の製品は、植物性タンパク質からなるミートボールとベーコンに少量の培養豚脂肪を組み合わせたハイブリッド製品となり、サンフランシスコを拠点とするレストラングループFiorellaと、小売り大手Sprouts Farmers Marketの店舗での展開が予定されています。
Fiorellaの共同創業者の一人Brandon Gillisは、「お気に入りの地元の食材を調達する能力からメニューの価格に至るまで、グローバルな食料サプライチェーンの脆弱性は、ビジネスのあらゆる側面に影響を及ぼしている。この潜在的な解決策として培養肉業界を注視してきたが、Mission Barnsと出会って製品を試食したとき、歴史的な瞬間のために何としてもパートナーシップを築きたいと思った」と語っています。
培養脂肪では世界初の認可に
米国で培養肉業界に安全性認可が出されたのは、2022年11月のUPSIDE Foods、2023年3月のGOOD Meat(いずれも培養鶏肉が対象で、2023年6月にUSDAの認可を得て販売が解禁)以来となる3例目。
培養脂肪についての規制認可を取得したのは、Mission Barnsが世界初の企業となりました。他企業の動きとしては、オランダのMosa Meatが欧州連合(EU)で先日申請を実施しましたが、認可判断には時間がかかる見込みです。
Mission Barnsは昨年、製薬業界で伝統的に使用されてきた単細胞懸濁培養を行うバイオリアクターに取って代わる、培養肉生産用に最適化されたリアクターを発表。
豚にダメージを与えない方法で腹部の皮下脂肪から分離した細胞を、植物由来の無血清培地を用いて培養し、コスト効率の良い大量生産が可能としていました。
2018年に同社を設立したEitan Fischerは、培養肉業界への資金提供がここ2、3年で急減し多くのスタートアップ企業が経営難に陥っていることを認めており、「当社だけでなく、業界全体に新たな機運が生まれることを期待したい」とコメントしています。
同社のターゲットは、味に妥協したくはないと考え、現在市場で手に入る植物性食品に不満を持っている消費者。動物の屠殺を行っていないにしろ、動物性脂肪を製品に含めることでヴィーガン食品とはみなされない可能性が高くなりますが、新世代の製品として新たな市場を生み出すこともできるとしています。
参考記事:
Cell Culture Consultation 000008 – Cultured Sus scrofa domesticus cell Scientific Memo | FDA文書
Breaking: Mission Barns secures FDA approval for cultivated fat, gears up for US launch
SF’s Mission Barns wins approval to sell lab-grown pork
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