精密発酵ラクトフェリンを開発するTurtleTree、米国でサプリメントの消費者向けブランドを立ち上げ

シンガポールのフードテック企業TurtleTreeが、アニマルフリーのラクトフェリンを原料とするサプリメントの消費者向け新ブランド「Intentional」を米国で立ち上げ、最初の製品を発売しました。
鉄分サプリメントの副作用を解消
同ブランドから最初に発売された「IronKind」は、ラクトフェリンとプレバイオティクス(特に酵母由来の多糖類)を組み合わせた製品で、鉄分の調節を助け、エネルギーレベルを上昇させ、腸の健康強化に寄与するもの。
ラクトフェリンは、増殖に鉄分を必要とする悪玉菌から鉄分を隔離、プレバイオティクスには善玉菌を増殖させる働きがあり、これら2つの成分が協働することで腸内細菌叢のバランスを整えられるといいます。
鉄と結合したラクトフェリンは栄養素を血中に運び込み、そこでヘモグロビンという酸素を全身に運搬するタンパク質を産生。ヘモグロビンによる酸素の供給でエネルギーレベルが上昇し、健康状態の改善が期待できます。
この製品は、創業者でCEOのFengru Linが、従来の鉄分サプリメント摂取に伴う副作用に個人的に悩まされていたことから生まれました。
Linは「従来の鉄分サプリメントは、私たちの体が必要としているかどうかにかかわらず、それよりも多い鉄分を供給してしまっている」と指摘。「こうしたサプリメントの取り過ぎは吐き気や便秘といった消化器系の問題を引き起こす場合もある一方で、ラクトフェリンは体内の鉄分濃度のバランスをとるのに役立つ」と話しています。
希少原料ラクトフェリンを精密発酵で代替
ラクトフェリンは、ヒトやウシの母乳(特に初乳)に多く含まれる鉄結合性の乳清タンパク質の一種で、抗菌、抗ウイルス、抗発がん、免疫力向上、腸内環境の強化といった作用があるとされています。
このような機能的利点から非常に価値の高い原料となっていますが、供給不足に悩まされているのが現状。わずか1kgの精製ラクトフェリンを得るのに1万リットルの牛乳が必要だといい、市場価格は1kgあたり750~1,500ドル(約11〜22万円)と高騰しています。
TurtleTreeはこの問題に取り組み、ラクトフェリンをスポーツ栄養、女性の健康、成人・高齢者向け栄養などの分野でより広く利用できるようにするため、精密発酵の技術を活用。
伝統的な発酵と最新のバイオテクノロジーを融合させたプロセスで、動物由来のものと全く同一のラクトフェリンを効率的に生産しています。
同じ手法でラクトフェリン生産に取り組んでいる企業は複数あり、All G(オーストラリア)、Helaina(米国)、De Novo Foodlabs(米国)、Daisy Lab(ニュージーランド)などがその一例。
TurtleTreeは2023年11月、初めてウシラクトフェリン「LF+」のGRAS自己認証を実施し、米国での販売が可能になりました。All Gは昨年末に、中国、米国で立て続けに販売認可を取得しています。
自社ブランドで収益を確保し成長を図る

Intentionalのターゲット層は、「ウェルネスとセルフケアに積極的で、伝統的な医薬品よりも栄養補助食品を選択する人々」。
ここには、いずれも鉄分不足に陥りやすい、月経中の女性、妊婦、子供、ベジタリアン、ヴィーガンなどが含まれます。
「IronKind」は専用ウェブサイトから購入でき、1瓶60カプセル入りが37ドル(約5,400円)で入手可能です。
TurtleTreeはこれまで、米国ではCadence Cold BrewとStrive Nutrition、本国シンガポールではMAD Foodsとの提携により、製品発売をアナウンスしてきました。いずれもまだ展開には至っていませんでしたが、今回の自社ブランド立ち上げにより、一定の収益が確保できるようになる見込み。
追加の資金調達も含めて自己資金を増加させ、さらなる技術開発によるコスト低減、ひいては会社全体の成長を図ります。
参考記事:
TurtleTree | LinkedIn
Animal-Free Dairy Startup Debuts Lactoferrin Supplement to Boost Iron Regulation
この記事へのコメントはありません。