スイス最高裁、植物性代替肉のラベルに「チキン」や「ビーフ」など動物名の記載を禁止

スイス連邦最高裁判所が、植物性代替肉製品のラベルに「チキン」や「ビーフ」、「ポーク」といった動物由来の用語を使用することを禁止する最終判決を下しました。

消費者の混乱が主要因に


この判決により、チューリッヒに本社を置くPlanted Foodsと食品安全当局との間で数年にわたって行われてきた係争に終止符が打たれました。

最高裁は、植物性食品に特定の動物種を表記することは、製品情報がその内容を正確に反映するよう義務付けている食品表示法の規定に矛盾すると判断。

たとえ「plant-based(植物性)」や「vegan(ヴィーガン)」のような修飾語が前に置かれていたとしても、伝統的に動物の肉と結び付けられてきた用語の使用は消費者を欺くことになり、これらの製品には許されないとしています。

今回の判断は、2022年にチューリッヒ州行政裁判所が下した判決を覆すもので、当初はPlanted Foodsの製品にある「planted.chicken」などの表現は、明確なヴィーガン表示と併用している限り誤解を招くものではないとされ、同州における食品安全の執行を担う州研究所の申し立てが棄却されていました。

しかし2023年1月、より広範な連邦レベルの食品政策を監督するスイス連邦内務省(FDHA)が、下級審の判決を不服として控訴。

この訴訟の中心にいたスイスの大手植物性食品メーカーPlanted Foodsは、消費者の大半(93%)は植物性と動物性の製品を苦もなく区別できると主張し、その事実を裏付ける市場調査も引用していましたが、認められませんでした。

国の取り組みと矛盾するとの指摘も


Plantedの共同創業者の一人Judith Wemmerは、今回の判決は消費者の理解を軽視しており、「シンプルかつ明瞭な用語で消費者の助けとなる代わりに不必要な官僚主義を生み、貴重な資源を浪費する」ものと批判。

「スイス国民として、このような重大な決定が政治的な動機と感情によってなされることに失望している」とし、植物ベースの食生活への移行を促す国全体の取り組みとの矛盾を指摘しています。

同国は昨年9月、新たな成人向けの食生活ガイドラインを策定し、より多くのホールフードと植物性タンパク質を摂取するよう推奨。

これに沿う形でスイス連邦参事会が先月発表したばかりの新しい栄養戦略では、植物由来の栄養摂取の増加、食品廃棄物の削減、持続可能な食環境の実現に重点を置き、国民に食生活の見直しを求めています。

「ステーキ」などの表現は使用可能


植物性代替肉に食肉関連の用語の使用を禁止する措置は、スイスが非加盟の欧州連合(EU)でもかつて検討されたものの、2020年に欧州議会により却下された過去があります。

フランスでは同様の規制が進められ、一時は政令の制定にまで至りましたが、欧州司法裁判所(ECJ)が介入して判決を下し、今年初めに撤回されました。

スイスにおいて規制の対象とされているのは広範な食肉関連用語ではなく、「ステーキ」や「ヒレ」といった名称は依然として法的に認められている状態。「ビーフステーキ」は禁止でも、「大豆ソーセージ」や、「レンズ豆ステーキ」といった表記は引き続き製品ラベルへの使用が可能です。

ただ、動物種を特定した食肉用語の使用が禁止されるのは欧州では初で、今後のスイス全土の表示慣行、ひいてはEUにおける規制の議論にも影響を与えることが予想されます。

参考記事:
No chicken, no cry: Where it says Planted on it, Planted is also in it ble – Planted Foods CH
Swiss court bans animal names for vegan meat substitutes – SWI swissinfo.ch
‘Vegan pork’: Swiss court bans animal names for plant-based products
Swiss Ban on Plant-Based Meat Labels ‘Contradictory’ to National Nutrition Strategy

関連記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。