UAEの農業プロジェクト、世界記録となるタンパク質含有量19%の小麦品種を開発

アブダビとドバイに次ぎ、アラブ首長国連邦(UAE)で3番目の国土面積と人口を有するシャルジャ首長国のムレイハ小麦農場(Mleiha Wheat Farm)で、19.3%のタンパク質を含む新品種の小麦が開発されました。国の食料安全保障と輸出増加を後押しする可能性があると期待されています。
AIを活用した灌漑システムとオーガニック農法

国土の約80%が砂漠に覆われ、極端な気候で水資源に乏しいため食用作物を育てるのが困難なUAE。耕作可能な土地は国土の2%にも満たず、食料供給の90%を輸入に頼っています。
こうした背景から食料安全保障上の大きな課題を抱えてきた同国ですが、タンパク質含有率が世界最高の19.3%を誇る小麦品種「Saba Sanabel」をムレイハ小麦農場が開発したことで、大きな突破口が開かれるかもしれません。
今年で3年目を迎えるこの農場は、生産効率を上げて地元の食料需要を満たすべく立ち上げられました。収量と品質の最適化を行う衛星サーマルイメージングや、ライブ予報を入手し作物を変動から守る気象モニタリングシステムといった最新技術を備えています。
品種改良のプロセスをスピードアップし、1,450もの系統を評価した結果、最も優れた特性を持つ品種を選択。これまでに開発され「Sharjah 1」と名付けられた独自品種の小麦は、高い塩分濃度と干ばつにも耐えられるのが特長です。
タンパク質を豊富に含む「Saba Sanabel」は、土壌の肥沃度を向上させ、小麦粒の品質を維持する有機農法により生産。栽培には、汚染物質を含まない脱塩水を用いた灌漑システムを構築し、人工知能(AI)による最適化で水の使用量を30%削減しました。
作物の栄養には天然肥料のみを与え、「Made in Emirates」認証など5つの品質・安全認証を取得。
UAEの気候変動・環境相を務めるAmna Al Shamsiは、「このプロジェクトを通じて、最も困難な農業の課題さえもイノベーションで克服できることが示された」とコメントしています。
食料安全保障を確立する助けとなるか
本プロジェクトの最新段階では、高タンパク小麦が1,400ヘクタール超の砂漠地帯で先進的な農業技術によって栽培されており、今シーズンは6,000トンの生産が見込まれています。
フル稼働させた場合の年間生産量は15,200トンとなり、シャルジャの全小麦需要を満たす量に匹敵。
シャルジャは、高タンパク小麦を輸出し、国際的な主要サプライヤーとしての地位を確立したい考えです。3回目の収穫の際には、パスタやクロワッサン、ケーキ、ビスケットなど、「Saba Sanabel」を原料とする製品ラインを発表しました。
UAEは、2051年までに世界で最も食料安全保障を確立した国になるという目標を掲げています。当初は、2021年までに世界食料安全保障指数(GFSI)ランキングでトップ10入りを目指していましたが、2022年時点では23位と、いまひとつの水準にとどまっていました。
2023年の報道では、同国人口の5分の1近くが貧困ライン以下で生活しているとのこと。地元産の植物性タンパク質が手頃な価格で手に入るようにすると同時に、持続可能性も両立させる施策として、高タンパク小麦の栽培拡大が期待されています。
参考記事:
Sharjah Breaks Global Record in Nutrition Quality Thanks to Innovative Food Techniques
Emirati Scientists Create Wheat Variety with ‘Record-Breaking’ 19% Protein
‘Saba Sanabel’: Sharjah’s wheat flour has world’s highest protein percentage
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