精密発酵で母乳のタンパク質を再現するポルトガルのPFx Biotechが、シードラウンドで約4.1億円を調達

ポルトガルのスタートアップ企業PFx Biotechが、Buenavista Equity Partnersが主導したシードラウンドで250万ユーロ(約4億1,300万円)の資金調達を行ったと発表しました。

酵母を用いて数種類のヒト乳タンパク質を生産


同ラウンドには、EIT FoodとBeta Capitalも参加し支援を実施。PFx Biotechは先日、欧州イノベーション会議・中小企業執行機関(EISMEA)からも同額の助成金を獲得しており、調達総額は500万ユーロ(約8億2,600万円)に達しました。

新たな資金は、専用研究施設の設置、チームの拡大、パイロット生産へのスケールアップに充てる予定。各段階で戦略的パートナーシップの相手となる企業を募集しています。

Ali OsmanHarry BarrazaDiana Oliveiraの3人が2022年に設立したPFx Biotechは、酵母を用いる精密発酵技術により、高機能なヒト乳タンパク質の生産に注力。乳児、アスリート、高齢者を含む各ライフステージの人々に対して、持続可能でGMOフリー、アレルゲンフリーの栄養ソリューションを提供することを目標としています。

同社は、母乳の中でも特に初乳に含まれる希少な乳清タンパク質、ラクトフェリンの開発から着手。鉄分を調節する機能や、抗菌作用、抗がん作用を有するラクトフェリンは、腸内環境の強化に寄与し、ヒトの免疫系調節において鍵となる成分とされています。

同じ技術プラットフォームはウシラクトフェリンの生産にも適応できるほか、母乳のタンパク質含有量で最大の25%を占めるα-ラクトアルブミンと、オステオポンチンについても研究開発を進めているとのこと。

いずれも乳児の発達に重要な役割を果たす成分ですが、成人においてもα-ラクトアルブミンは睡眠の改善、認知レジリエンス向上、ストレスの緩和に効果があり、オステオポンチンは骨の健康を強化し、体の炎症反応を調節する機能が示されています。

スタートアップ企業の同種の開発事例


母乳の代替品開発に取り組んでいるのは米国企業が多く、Yali BioThe Live Green Coはヒト乳脂肪のOPO(1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセロール)を精密発酵で模倣した代替品を開発しています。

Helainaは昨年、精密発酵ヒトラクトフェリンの商業化に向けて4,500万ドル(約65億2,000万円)の調達を実施。Checkerspotは、微細藻類の発酵を用いてヒト乳脂肪の大規模生産に成功しました。

それ以外では、PFx Biotechと同じポルトガル企業のCarboCodeが、生体触媒と発酵を用いる独自技術でスフィンゴ脂質(GSL)とガングリオシドを生産。

フランスのNūmiは細胞培養により、母乳に含まれる数多くの成分を可能な限り再現しようと努めています。

参考記事:
Reinventing milk: Portuguese startup PFx Biotech lands €2.5 million to develop allergy-free human milk proteins | EU-Startups
PFx Biotech closes US$2.7 million seed round to scale up production of human milk proteins | PPTI News

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