スウェーデンのCirculoseがH&Mと提携、ファッション業界における循環型経済の推進を加速

環境負荷の低い代替素材を開発するスウェーデンのCirculose(旧称:Renewcell)が、スケールアップを目的としたプラットフォームを立ち上げ、同じくスウェーデンに拠点を置くファッション業界のリーダー企業H&M、およびスペイン発のブランドMangoとの提携を発表しました。
テキスタイル廃棄物のセルロースを回収・再利用

世界では、毎秒ダンプカー1台分のテキスタイルが埋め立てまたは焼却処分されているといい、テキスタイル廃棄物は2015〜30年にかけて約60%増加するとも推定されています。
Circuloseは、こうした使用済みの衣類や製造工程の廃棄物からセルロースを回収し、ビスコース、リヨセル、モダール、アセテートといった再生繊維の基材となる「溶解パルプ」を製造する取り組みを実施。
製造工程では、特にセルロース豊富な綿生地を原料に、粉砕・脱色してスラリー状に加工することで、ポリエステルなどの不純物を除去してセルロースのみを抽出。スラリーを乾燥させてシートを作り、ロール状にして出荷します。
衣類メーカーは、この素材で綿や木材パルプなどの原料を置き換え、新品同様の品質のテキスタイル製品に仕上げることが可能です。
ファッションとテキスタイル業界における循環型経済の促進を加速するため、同社はサステナビリティに特化した非営利団体Canopyと提携して、「CIRCULOSE Forward」プラットフォームを立ち上げました。
プラットフォームの目的は、Circuloseの素材をサプライチェーンや製品にスムーズに組み込みたいブランドを支援するもの。拡大に向けた最初のパートナーとして、欧州のファストファッション大手H&MとMangoを迎えました。
破産からの再建を図る
H&MとMangoはいずれも、人工セルロース繊維(MMCF)の使用量の相当部分を、Circuloseの代替繊維に置き換えることを目指しています。
その背景にあるのは、主に木材から製造されるMMCFが抱えている、持続可能性の問題。木材の調達には森林を伐採する必要があるほか、パルプを化学的に繊維へと加工する過程でも汚染が発生するのは避けられません。
とりわけH&MはCirculoseの投資家であり、2020年春コレクションでそのセルロース繊維を初めて採用した小売業者でした。現在、両社は複数年の供給契約を通じて関係を深めています。
2012年にストックホルム王立工科大学(KTH)の科学者たちがRenewcellとして設立したCirculoseは、リーバイス、ガニー、トミー ヒルフィガー、ZARA、カルバン・クラインといった有名ブランドとの提携を実現させてきましたが、2024年2月に破産申請を実施。その3カ月後、Altor Equity Partnersに買収され、元H&M GroupでCEOを務めたHelena Helmerssonが社長に就任しました。
H&M GroupのCecilia Strömblad Brännstenは、「2030年までに素材調達の100%をリサイクル素材または持続可能な調達源から行うという目標を達成する上で、次世代素材への投資は不可欠だ」とコメント。「こうしたソリューションへのアクセスを拡大することは、ファッション業界の循環型経済への移行を加速するための鍵となる」と語っています。
参考記事:
H&M Group signs strategic sourcing partnership with Circulose – H&M Group
Mango Advances in Sustainability with Circulose Partnership to Boost Textile Circularity – Mango Fashion Group
How Are H&M and Circulose Collaborating for Recycled Fibres? | Manufacturing Digital
繊維リサイクル企業Renewcellの破産:その理由は価格か、認知度か、業界の姿勢か? | WIRED.jp
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