酵母を発酵させて得られるClean Food Groupの代替オイル、米国と欧州で化粧品原料としての認可を取得

持続可能な酵母由来オイルを生産する英国のスタートアップ企業Clean Food Groupが、米国、欧州連合(EU)、および英国で化粧品原料として販売を行うための規制認可をクリア。持続可能な代替油脂の開発における重要なマイルストーンを達成しました。

油脂生産に伴う排出量を90%削減


バース大学に起源を持つClean Food Groupは、共同創業者であるChris Chuckの10年にわたる研究に基づき技術基盤を形成。英国政府や、EUの機関EIT Foodからの援助を含め、これまでに1,300万ポンド(約26億円)を調達しています。

同社の独自技術「CLEAN OilCell」プラットフォームは、廃棄となったパンを餌として非遺伝子組み換えの油性酵母株を培養し、その発酵過程で油脂を生成させるもの。

再生可能エネルギーを利用して、油脂生産に伴う温室効果ガス排出量を最大90%削減できます。

先月、Döhler Venturesからの支援を受けた同社は、新たなインフラを構築することなく技術のスケールアップに成功。設立から3年にして、6万リットルの商業生産を達成しました。

英国のパーソナルケア大手THGの製品開発部門THG Labsと、特殊化学品メーカーCrodaとの共同開発により誕生した「CLEAN Oil 25」は、資源集約的で汚染度の高い化石燃料やパーム油のような従来の油脂に代わる製品。美容・化粧品業界への展開が認められたことで、今後迅速に市場投入を図る方針です。

世界約30カ国に拠点を持つCroda(クローダ)の副社長Damian Kellyは、「当社はClean Food Groupの創業時から支援を提供しており、同社の進展を誇りに思うとともに、新技術の価値を最大化するための継続的な協業を期待している。この協業は、大小さまざまな英国企業が連携して世界市場の課題解決に取り組む好例だ」と語っています。

EUの新規制で重要度が増す代替油脂


Clean Food Groupは自社の酵母オイルを、スキンケアやヘアケア、さらに広範なパーソナルケア分野における「高機能で持続可能な製品」の基盤と位置付け。

Chuckは、「化粧品向けの認可取得は、今日の英国で推進されているバイオテクノロジー業界の革新の輝かしい事例であり、商業規模の成功につなげるためにサプライチェーンや製造分野を横断した連携によるイノベーションがいかに重要かを示すものだ」とコメントしました。

2030年までに4,460億ドル(約65兆7,000億円)規模に達すると予測される世界の化粧品市場に照準を合わせると同時に、もう1つの製品「CLEAN Fat」で食品市場への参入も計画しています。

近年、巨大でありながら深刻な問題を抱える世界の油脂産業の脱炭素化を目指し、代替品でイノベーションを推進するスタートアップ企業が増加。

EUの新たな規制(EUDR*)が12月に施行されれば、パーム油などの森林破壊に関連する品目を含む製品の輸入が禁止されるため、こうした解決策は非常に魅力的なものとなります。

Clean Food Groupのほかに開発を手掛ける企業としては、NoPalm IngredientsÄIOC16 BiosciencesSavorSmeyなどが挙げられます。

* 欧州森林破壊防止規則(EU Deforestation Regulation):2023年6月29日発効。大豆、牛肉、カカオ、コーヒー、パーム油、ゴム、木材の7品目およびそれらの関連製品を対象に、生産において森林伐採・破壊が行われていないことを証明できない限り、EU域内への輸入が禁止される。当初は2024年に施行が予定されていたが、1年延期され、大企業は2025年12月30日、中小企業は2026年6月30日より適用開始となった。

参考記事:
Clean Food Group’s CLEAN Oil™ 25 secures cosmetics approval unlocking new pathways for sustainable beauty — Clean Food Group
Agronomics Limited Announces Clean Food Group Update
Derived from Waste, Clean Food Group’s Yeast Oil Gets Cosmetics Approval in US & Europe

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