発酵による代替シーフードのパイオニアAQUA Cultured Foods、規模拡大と資金調達に難航し閉鎖を決断

米国・シカゴを拠点とするスタートアップ企業のAQUA Cultured Foodsが、投資家の優先度低下を主要因に、正式に事業停止を決定。バイオマス発酵技術により持続可能な代替シーフードの商業化を目指した約5年間の取り組みに、終止符が打たれました。
ハイエンド市場での商業展開を実現
Brittany ChibeとAnne Shaefferが2020年に共同で創業したAQUA Cultured Foodsは、セルロースを質の高い代替シーフード製品に変換する独自の発酵プロセスを開発。
高級レストランと小売市場の両方をターゲットに、生のマグロやホタテの見た目と食感を再現した製品の生産に注力してきました。
2024年に米国食品医薬品局(FDA)のガイドラインに基づいたGRAS(一般に安全と認められる物質)自己認証を行い、商業展開が可能に。複数のミシュラン星付きレストランに製品を供給し、グローバルに展開する小売業者や原料メーカーの関心も集めました。
これまでに累計で1,000万ドル(約15億8,000万円)の調達を実施、19件の特許出願を完了させていましたが、2025年末に事業の終了を決断。現在は、幅広く応用可能な技術、知的財産、ノウハウ、場合によってはブランドも含めた資産の譲渡先として、事業を継続できる相手を模索中とのことです。
CEOのChibeは、「技術の実証、外食産業における市場適合性の検証、そして汎用性の高いプラットフォーム構築は達成できた。それでも発酵ベースの生産を拡大する上では、味や食感、一貫性、安全性の高い基準を維持する場合は特に、多大な資金と時間を要する」とコメント。
「新規投資を行うファンドが減り、多くの投資家は既存のポートフォリオ企業や短期的な利益が見込めるレイターステージの企業、またはリスクが低いとみなされる分野を優先した」とし、資金調達環境の変化が「大半のアーリーステージの企業が適応できる速度をはるかに上回った」と説明しています。
技術は確立されるも、市場環境が未成熟
代替プロテイン業界の企業がベンチャーキャピタルから約70億ドル(約1兆1,100億円)を集めた2021年をピークに、投資家は続けざまに撤退。2022年の調達額は32億ドル、2023年は15億ドル、2024年には11億ドルへと減少しました。
この傾向は2025年も続き、年初からの9カ月間で調達額はわずか6億1,100万ドル(約967億円)に留まっています。
この状況は業界内の統合を加速させ、多くのスタートアップ企業の閉鎖も招きました。『Green Queen』によると2024年9月以降、60社以上が買収・合併、清算、または事業停止に追い込まれています。
代替シーフードは、「未来の食」市場において依然としてごくわずかな割合を占めるに過ぎず、特に厳しい状況に直面。Upstream FoodsやVegan Finest Foodsは事業を停止し、米国セレブに人気のあったヴィーガン寿司チェーンPLANTAは破産手続き中にベンチャーキャピタルグループに買収されました。
Chibeはこの分野が5~10年早すぎたと分析し、「技術自体は確立されていても、市場環境が追い付いていない。消費行動、価格競争力、流通インフラ、文化的受容といった要素すべてが整う必要があり、現時点では未成熟だ。シーフード市場は依然として巨大な可能性を秘めているが、忍耐強い資本注入と現実的な拡大戦略が不可欠となる」と語っています。
代替プロテイン業界の長期的な展望を強調
AQUA Cultured Foodsはシカゴに5,000平方フィート(約460平方メートル)のパイロットプラントを稼働させており、高級レストラン20店舗の需要に対応できる規模という5,000ポンド(約2,300kg)の原料を生産可能。
同社の生産プロセスは、他社の発酵ベースまたは培養ベースのタンパク質生産と比較して資本支出が少ない点でも注目されていました。
同社が推進していたクリーンラベル戦略は、加工を最小限に抑えた代替肉・シーフード製品に対する消費者の関心の高まりと合致していたものの、広範な市場化は依然としてカテゴリー全体の継続的な課題となっています。
2年前に同社を離れ、現在はAkarso BioのCEOを務めるShaefferも、閉鎖についてコメントを発表。同分野の長期的な展望を強調し、「代替肉やシーフードは、将来の世代の食を形作る長期的な変化の一部だ。次に登場する企業は、初期のリスクを背負って可能性を証明した先駆者たちの肩の上に立つことになるだろう」と話しています。
参考記事:
Brittany Chibe | LinkedIn
Aqua Cultured Foods Shuts Down After Five Years Developing Fermented Seafood Alternatives
Aqua Cultured Foods: US Fish-Free Startup Shuts Amid Scale-Up & Funding Challenges
AQUA Cultured Foods concludes operations after pioneering whole-cut, fish-free seafood | PPTI News


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