国連食糧農業機関(FAO)、培養肉と精密発酵食品に関する規制の簡素化を各国政府に要請

国連食糧農業機関(FAO)が、『細胞性食品および精密発酵食品に係る規制枠組みについて』と題した新たな政策文書を発行しました。培養肉などの新規食品が主流化へ向けて進展する中、規制枠組みの合理化を各国政府に求めています。
安全性や承認プロセスに関する検討が不足
新たな政策文書において、FAOはコーデックス委員会(FAOとWHOが共同で設立)やWTO協定の枠組みを参照し、新規食品を規制する上でのギャップと課題を指摘。これは単なる技術的問題ではなく、「政治的・法的な問題でもある」と論じました。
立法措置は、各国がこうした製品の市場参入を管理する能力を提供するとともに、その開発について意識的な政策決定を実施するための枠組みを設定できるものですが、この分野における立法に関するガイドラインはほとんど存在しません。
現在の焦点は主に用語の使用や表示内容に当てられており、EUでは特に、食品の安全性や市販前の承認プロセスに関する探求は限定的。
「細胞性食品が一般的な食品関連法や食品安全規制にどのように統合されるかという実質的な分析が特に欠けている。製品ごとの規制枠組みの影響や、食品事業者に求められる適応策を取り上げた研究はほとんど、あるいは全く存在しない」とFAOは指摘しています。
試食提供や禁止措置にも言及
FAOは、地域および国家レベルの法規制におけるアプローチを分析し、既存の食品安全の枠組み(特に新しい食品や生産システムを対象とするもの)が、細胞性食品や精密発酵食品にも一般的に適用され得ることを概説しています。
これら新規食品の安全性基準の設定と監督、品質保証の監視、販売認可プロセスの整備などの権限を有する機関を、法的に明確にするべきとFAOは指摘。
この点で、米国の食品医薬品局(FDA)と農務省(USDA)が共同で管轄するシステム* は、両者の役割分担が確立された好例に挙げられています。
さらにFAOは、これらの食品に対する認可前の試食提供が、特別な注意を要する法的問題だと強調。実験的生産と市場参入の間の暫定的な架け橋として機能するイベントにもかかわらず、現在のほとんどの規制枠組みでは考慮されていないと述べました。
また、イタリアをはじめ一部の国が培養肉に対する禁止措置を施行または検討しており、包括的なリスク評価が未実施であることや他国の先例待ちを理由に、こうした取り組みが予防的措置として正当化されている現状にも言及。「ただし、各国の決定とその根拠は、当該国の国際的・地域的な法的義務と整合していなければならない」と記しています。
確かに、消費者の混乱や誤情報の蔓延を防ぐためには透明かつ正確なラベル表示が重要としていますが、調査では一貫して、代替肉の現行の表示が大きな誤解を招いてはいないことが示されています。
* FDAが培養した細胞を収穫する前の生産段階(細胞の採取・保存・増殖)を監督し、収穫後の段階(加工・包装・表示)についてはUSDAに責任を移管する。
参考:【シリーズ 未来の食】 第7回 培養肉の認可に必要なプロセスは?各国で異なる法規制と申請の流れ
各国の規制枠組み確立に向けた提言
今後を見据えて、FAOは培養肉や精密発酵食品の規制枠組みを強化したい国々が優先すべき行動をいくつか提示しました。
まず当局は、既存の規制枠組みが新規食品にどう適用されるかを評価し、明確化すること。現行の規制を適用する適格性について曖昧さが残る場合は、この措置により食品製造業者に確実な法的根拠を提供して、従来型製品向けの食品安全基準が適切に調整されるようにする必要があります。
FAOはまた、培養食品および精密発酵食品に対する追加的な市販前承認の枠組みが必要かどうかを、各国政府がそれぞれに検討するよう要請。
場合によっては、食品表示や命名規則、あるいは新技術のニーズを反映した添加物・酵素・加工助剤の許容リストといった、特定の規制要素の開発やアップデートが要る可能性もあると示唆し、生産、表示、認可を支援するガイドラインを策定するとともに、適正製造規範(GMP)などを作成することが望ましいとしています。
さらに、コーデックス委員会のような国際機関に対しては、これらの製品に関する明確な定義とガイドラインを巡る議論を継続するよう提言。国際貿易を円滑化し、食品生産者の不安を軽減するためにもこうした取り組みは重要です。
最後に、FAOは規制枠組みが広範な協議を通じて策定され、あらゆる視点を反映すべきだと主張しました。これには生産者、消費者、産業界、市民社会団体、政府だけでなく、環境や動物の権利に焦点を当てた組織、農業従事者や労働組合も含まれます。
「バイオテクノロジーの専門家、公衆衛生当局、業界団体からの意見を取り入れることで、イノベーションの促進、健康評価の実施、円滑な市場統合が保証される。このようなアプローチによって、規制が社会の価値観に沿ったものとなり、安全性、透明性、倫理、持続可能性を巡る主要な懸念事項に確実に対処できる」と記しています。
参考記事:
FAO Asks Countries to Simplify Regulation for Cultivated Meat & Precision Fermentation
FAO maps the legal maze for cell-based foods and precision fermentation as Codex work stays formative | PPTI News
FAO Publishes Report on Regulatory Frameworks for Cell-Based, Precision Fermentation-Derived Foods | Food Safety Magazine


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