米陸軍、戦闘糧食用にガス発酵タンパク質を生産するためBiosphereに14億円超を拠出

米国・カリフォルニア州のスタートアップ企業Biosphereが、米陸軍向けにガス発酵タンパク質を生産する携帯型バイオリアクターを開発するため、米国防総省(DoD)から900万ドル(約14億1,000万円)の助成金を受けました。

戦地におけるオンデマンドのタンパク質生産へ


米国防総省は、UV(紫外線)滅菌バイオリアクターを用いたガス発酵により安価なタンパク質原料を生産するBiosphereに対して、助成金を交付しました。

ガス発酵とは、糖の代わりにCO₂などの空気、水、電気を微生物に与えて、高付加価値の化合物を作り出す技術のこと。初期用途としてバイオ燃料や化学物質の生産に使われていた技術ですが、その後多くのスタートアップ企業が食品分野にも応用範囲を広げてきました。

最も成功した例として、フィンランドのSolar Foodsはシンガポールでの商品化を成功させ、今年中に米国市場にも参入予定です。

今回の助成金は、米陸軍戦闘能力開発司令部(DEVCOM)兵士センターを通じて、国防総省のプログラムの一環として交付されるもので、3年半で総額900万ドル。遠隔地や物流が困難な環境下で米陸軍向けにオンデマンドでタンパク質を生産できる、携帯型バイオリアクターの開発に充てられます。

バイオ製造は、国防総省が重点的に取り組む6つの技術分野のうちの1つであり、同省は「不利な環境下における運営のレジリエンス強化と兵站上の脆弱性の低減」を目指しています。

DEVCOM兵士センターの技術責任者Nicole Favreau Farhadiは、「この取り組みは、兵站の負担を軽減して作戦上の柔軟性を高める、レジリエントな前方展開能力の向上に注力している軍の姿勢を反映したものだ」とコメント。

「栄養をはじめとした重要資源の現地生産を可能にする技術は、将来の作戦において、より適応性と分散性を備えた補給体制を構築する重要な一歩となる」と述べています。

従来型バイオリアクターの複雑さを低減


Biosphereは2025年初頭、UV滅菌バイオリアクターの発表とともにステルスモードから脱却し、数十年にわたり産業用バイオ製造分野を悩ませてきた設備投資の大幅な削減を実現しました。

バイオ製造業界は依然として、1940年代にペニシリン製造用に開発された、高価な蒸気滅菌バイオリアクターに大きく依存しています。このようなリアクターは数十個のバルブと数百本のパイプを備えた複雑な構造を持ち、高額な初期費用が市場参入の障壁となっていました。

この問題を解決するため、Biosphereは紫外線照射と先端材料を活用して機器の簡素化を図りました。UV滅菌によって無菌環境を作り出す同社のリアクターは、設計の自由度を飛躍的に高めます。具体的には、従来のシステムに比べて材料費を10分の1に削減し、殺菌速度を6倍に向上させるとともに、バルブとパイプの数を3分の1に減らしました。

共同創業者でCEOを務めるBrian Heligmanは、「当社独自のUV滅菌リアクターを活用すれば、栄養価が高く長期保存可能な食品をどこでも生産できる。これにより従来のサプライチェーンの制約を解消し、軍の作戦遂行能力を向上させられる」と述べています。

携帯型バイオリアクターの開発プロジェクトは、まずプロセス選定と設計段階から始まり、パイロットスケールでの実証を経て、連続運転可能なフルスケールの試作品開発へと進みます。作業はカリフォルニア州にあるBiosphereの施設で行われ、最終製品サンプルは評価のため陸軍に納入されます。

求められる主なイノベーションとして、汚染のない生産を実現するUV滅菌手順、水と培地のリサイクルシステム、そして軽量で栄養価が高く、すぐに食べられる食品を製造する後工程の開発が挙げられています。

本プロジェクトでは、最大18人の兵士に対し、1人あたり1日2,800kcalの食事を現地生産。複雑なサプライチェーンへの依存度を低減して、将来的には250人分まで規模を拡大する計画もあります。

DEVCOM兵士センターは先日、最前線で戦う兵士用の代替タンパク質を生産する技術の開発を、企業や研究者に呼びかけたところ。これには、戦闘地域で製造でき、調理が不可能な状況下で兵士が携行する戦闘糧食(MRE)に組み込むことができる、植物由来および発酵由来のタンパク質が含まれます。米陸軍は昨年、2027年からヴィーガン対応のMREの提供を開始すると発表しました。

参考記事:
Biosphere Awarded $9 Million U.S. Army Contract to Develop On-Demand Nutrition Production System for Warfighters
US Army Pumps $9M Into Biosphere to Produce Gas Protein for Military Rations
Biosphere lands Pentagon funding to build portable “protein from air” bioreactors
Biosphere to Produce Food for US Troops From Air, Water, and Electrical Power

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