乳製品大手のBel GroupがStanding Ovationと提携、ホエイ残渣のアップサイクルによる精密発酵カゼイン生産へ

「笑う牛」の印象的なパッケージで知られる乳製品大手のベル・グループ(Bel Group)が、同じフランスの精密発酵スタートアップStanding Ovationとの提携を発表しました。
牛乳由来の廃棄物を有効活用して、次世代の代替乳製品の生産を進めます。
約半分は廃棄されるチーズ製造の副産物
Standing Ovationは、酪農業界で最大の廃棄物となっている酸性乳清(acid whey)を、精密発酵プロセスを通してカゼインタンパク質に変換する方法を開発しました。
推定では、チーズ製造の副産物として発生する乳清(ホエイ)は、世界全体で年間100億トン以上。プロテインパウダー、機能性食品、食用フィルムやコーティング、乳酸などの付加価値製品に加工して利用されるものの、約半分は廃棄されており、廃棄物総量の80~90%を占めているともいわれます。
一方、余分なホエイの処理にもコストがかかり、生物化学的酸素要求量(BOD)* が廃水に比べてかなり高いため、農地にダメージを与える可能性も。水域に排出されたホエイは、汚染、生態系バランスの破壊、制御不能な微生物の増殖を引き起こしています。
Standing Ovationは、出資者となっている乳業大手のBel Groupから供給されるホエイを活用することで、食品廃棄物を減らし、循環型経済の構築に寄与する狙いです。
* 一般的な水質指標の一つで、分解のために微生物が必要とする酸素の量を表す。
ホエイ残渣を発酵させてカゼインを生産
ホエイに含まれる乳糖やガラクトースなどの糖を、微生物の餌として発酵させると、微生物がもう一つの主要な乳タンパク質であるカゼインを生成。
カゼインは乳化、安定化、ゲル化を担い、チーズの溶けや伸び、アイスクリームのクリーミーさといった、乳製品に欠かせない機能的特性を付与します。
Bel Groupの投資判断や提携を担うCaroline Sorlinは、「Standing Ovationの技術と当社のチーズ製造の専門知識を組み合わせることでこの技術革新を実践でき、栄養、利用しやすさ、社会的責任を兼ね備えた製品を作る、全く新しい可能性の世界が開けるだろう」と語っています。
Standing OvationのCEOを務めるYvan Chardonnensによると、同社のホエイの処理能力は現在のところ数千リットルで、複数大陸のステークホルダーとの話し合いで段階的なスケールアップを模索している最中。
また、同じく業界大手の欧州味の素食品(Ajinomoto Foods Europe)と提携して、フランス北部にある大規模工場で精密発酵カゼインの生産を目指しています。
参考記事:French Startup to Create Recombinant Milk Proteins from Bel Group’s Whey Waste
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