欧州委員会がバイオエコノミーへの投資を強化、発酵を中心とした食品技術などの支援に約600億円の拠出を決定

欧州委員会(EC)が、2030年までにEUをライフサイエンス分野のグローバルリーダーとして位置付けることを目的とした戦略を策定しました。持続可能なバイオエコノミーへの投資を強化し、特に発酵産業に焦点を当てています。
発酵生産におけるスケールアップの課題に対処
この戦略は、イノベーションの加速、市場へのアクセス促進、新技術に対する公共の信頼醸成を目的としたもの。その一環として、委員会は発酵技術を中心とした食品・農業分野のイノベーションを支援するため、3億5,000万ユーロ(約600億円)に上る資金調達の機会を設けると決めました。
発酵技術、中でもバイオマス発酵と精密発酵は、EUの持続可能な食料生産へのアプローチの中核を成しています。
農業副産物を食品へと変換するバイオマス発酵は、廃棄物の削減と代替肉の原料生産を両立させ、一方の精密発酵は、乳タンパク質や脂肪、パーム油などの持続可能な代替品生産に活用が進められてきました。
しかしながら、技術の拡大を目指すスタートアップ企業や中小企業は困難に直面しているのが現状。EUの新たな戦略では、この課題に対処する措置を複数盛り込んでおり、官民連携や年次カンファレンスを通じて協働と知識の交換を促す取り組みなどが検討されています。
規制認可を早めるAIツールの開発も検討
資金提供に加え、ECは食料システムにおける主要課題に対処するための戦略的研究・イノベーション計画も提案。具体的には、代替プロテイン製品の味、食感、コストの改善などが挙げられています。
また、超加工食品(UPF)を巡る近年の批判や言説についても、健康上のメリットが立証されているにもかかわらず、植物由来の選択肢の採用を妨げる可能性があるとして、消費者の理解を深めることを意図した広報活動に重点を置いています。
ECはさらに、培養肉や精密発酵タンパク質を含む新規製品の承認を加速するため、バイオテクノロジー法(Biotech Act)の制定を提案。これまでEUの新規食品に関するアプローチは、全加盟国で構成される委員会での合意を前提としたもので、世界的に見ても厳しい規制措置が敷かれてきました。
先日発表された研究は、欧州食品安全機関(EFSA)による新規食品の承認には平均2年半を要しており、「プロセス設計の根本的な見直しが必要」と指摘。承認を早めるべく、より明確なガイドライン、申請書類の改善、申請前のコミュニケーションを求めました。
ECは「中央集権的なアプローチであっても、人間と環境の安全性を確保するため市販前承認を要する規制枠組み下での長期にわたる認可手続きは、革新的な製品の市場投入を遅らせる」とし、AIを活用した規制環境をナビゲートするツールの開発を発表。ユーザーが特定のニーズに合わせて重要な情報、データセット、ツールを特定できるようにする計画です。
参考記事:
Commission launches new strategy to make Europe a global leader in life sciences by 2030
Strategy for European Life Sciences €350 million funding opportunities set to boost EU food innovation – GFI Europe
EU Spotlights Fermentation in Latest Strategy with €350M Funding for Biotech
Could the EU’s Biotech Act Finally Break the Novel Food Approval Deadlock?
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