Magic Valleyがオーストラリア初の培養ドッグフードを発売、英国に次ぐ2例目

オーストラリアの培養肉スタートアップMagic Valleyが、培養ペットフードのブランド「Rogue Pet」を立ち上げました。早期の収益確保を目指した試みで、初回分は1週間以内に完売しています。

オーストラリア初の培養ペットフードが実現


メルボルンに拠点を置くMagic Valleyは、2020年の創業以来ヒトの食品向けの培養豚肉開発を進めてきましたが、市場参入と早期の収益創出を目指して、新たにペットフードブランド「Rogue Pet」を立ち上げ。オーストラリアで初の事例となる、ペット用培養肉の販売を開始しました。

最初の製品となった犬用スナック「Training Bites」は、培養豚肉にオーツ麦パウダー、リンゴ、サツマイモ、ビール酵母を配合したハイブリッド肉。Magic Valleyのウェブサイトで販売され、50gパックで14.95豪ドル(約1,700円)でした。

初回の在庫は1週間で完売し、収益を上げることに成功。今後も8~12週間以内に再度出荷を予定しています。

創業者でCEOのPaul Bevanは、「初回分がすぐに売り切れたのは、消費者需要があり、市場の準備も整っていることを示す強力なシグナルだ。今後の販売、ブランド構築、そして長期的な市場リーチの拡大を通じて、初期の牽引力を継続的な成長につなげていくことに重点を置きたい」と述べています。

ペット向け製品で事業基盤の強化を狙う


野生動物の宝庫として知られるオーストラリアですが、家庭で飼育される動物の数も非常に多く、ペットの数が人間の数を上回っているほど。

73%もの世帯がペットを飼育しており、2019年の40%だった犬の飼育率は、2025年には49%に増加しているとの予測もあります。世界の多くの国と同様に、この増加は新型コロナのパンデミック中に加速しました。

Bevanはペットフードを培養肉への魅力的な入り口だと考えているといい、「ペットの飼い主は品質、倫理、持続可能性を非常に重視しており、多くの人がペットにより良い餌を与える方法を模索している」と指摘。

「Rogue Pet」の展開により「生産、顧客獲得、そしてリピート購入に至るまで、真の運用能力が構築でき、これは当社の事業全体を長期的に強化することにつながる」としています。

Magic Valley以前に、世界でペット用培養肉の製品化にこぎ着けたのは英国のMeatlyのみ。ほかの企業はまだ発売には至っていませんが、財政難に苦しむ培養肉業界では、すぐに収益源となり得るペットフードで商業的な牽引力を生み出す戦略の一環として注目されています。

現在、Bene Meat TechnologiesBiocraft Pet NutritionUmami BioworksがEUで飼料原料としての登録を済ませ、ペットフードの原料として展開できる体制を整えています。Friends & Familyは昨年、シンガポールで販売する際に必要な認可を取得しました。

オーストラリアでは、ペットフードの規制は主にオーストラリアペットフード協会(PFIAA)が策定した自主基準にとどまっています。これは特定の製品に限って承認を与える制度ではなく、ペットフード用の枠組みと基準に沿って製品が開発・製造・販売されていることを保証するためのもの。「Rogue Pet」も、この枠組みの中で基準を満たす製品として確認が行われました。

「ペットフードと人間の食品は異なる枠組みや要件に基づいているため、それぞれ別々の道筋として考えるのが最善だ」とBevanは説明しています。

ヒトの食用での認可取得も計画


Magic Valleyは培養豚肉の生産に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を活用しています。生きた動物から少量の皮膚細胞を採取した後、増殖させてiPS細胞に変換し、筋肉や脂肪へと分化させます。

細胞はバイオリアクター内で、水、アミノ酸、その他の栄養素を混合した状態で培養されますが、成長因子としてよく使われるウシ胎児血清(FBS)は不使用。数週間後に採取した細胞は、肉製品へと加工されます。iPS細胞は無限に増殖できるため、元の細胞サンプルから繰り返し肉を作ることが可能です。

同社によると、このプロセスは従来の食肉生産と比較して、排出量を92%、土地利用を95%、水使用量を78%削減できるとのこと。

これまでに培養豚肉の一般向け試食提供も複数回行い、昨年6月にはニューサウスウェールズ州議事堂に政治家を招いて試食イベントを開催しました。

同社は今年、新たな資金調達を進めており、またヒトの食用での規制クリアに向けてオーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)との連携も計画中。

FSANZは、同じ豪州企業であるVowの培養ウズラに対して初の認可を昨年出しています。レストランやウェブサイトで販売されているVowの製品は、発売以来需要が毎月200%増加しているといい、好調なスタートを切っている様子。

Magic Valleyは培養豚肉の展開時にも同様の勢いが得られると期待しており、「技術、製品、そして規制の基盤をすべて整えた後で、適切な市場と製品を決定し、一歩ずつ事業を築いていきたい」としています。

参考記事:
Paul Bevan | LinkedIn
Rogue Pet: Magic Valley Debuts Australia’s First Cultivated Meat for Dogs

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