イスラエルのImagindairyが米国でGRAS自己認証を取得、乳タンパク質で3社目
イスラエルの精密発酵企業Imagindairyが、乳清タンパク質のGRAS自己認証(self-affirmed GRAS)を取得したことを発表しました。乳タンパク質のGRAS自己認証を取得した企業としては、米Perfect Day、同じイスラエルのRemilkに次いで3社目となります。
米国内での販売が可能に
GRAS(一般に安全と認められる物質)とは、米国食品医薬品局(FDA)の定める、新規食品成分の安全性を保証するための認証制度。精密発酵で得られた食品成分は新規なものであるため、販売にあたってはGRAS認証の取得が必要となります。
GRAS認証を受ける際にFDAの認可は不要で、各企業は自社製品の評価を初期判定として行うことができます。専門家により安全性が評価され、FDAの要求事項を満たしていると判断されれば、FDAへの通知は任意です。
ただし自己認証取得後、正式にFDAに提出して審査を通れば「GRAS Notice」を取得でき、該当物質がGRASリストに「FDA has no questions(異議なし)」として収載されることとなります。
Imagindairyでは今回、安全性試験を経て自己認証を取得し、すでにFDAへの通知も済ませているとのこと。米国での販売が可能になりましたが、イスラエル本国での認可を取得しているのは現状Remilkのみで、Imagindairyは今年中の認可取得を目指している様子です。
次なる成長を見据え新本社を開設
2020年設立のImagindairyは、「自然から着想を得て」微生物をベースにした生産手法を採用。飼料をタンパク質へと変換する効率が牛の20倍も高い微生物に、餌を与えて発酵させます。
同社の生産プロセスは既存の乳製品加工施設の工程にも組み込むことができ、生産時間を短縮するとともに、高い収率を得られることが魅力。
今年5月には、フランスの乳業大手ダノンが同社の少数株式を取得しました。これにより、シードラウンドでの累計調達額は2,800万ドル(約39億5,000万円)に達しています。
Imagindairyはこれらの資金を用いて、次なる成長フェーズに備えた新本社をイスラエル国内に開設。研究開発のための最新鋭のラボ、料理や食材への応用を探るテストキッチン、大規模な発酵工程と同じ条件下でのテスト生産を可能にするパイロットラインを備えています。
世界の精密発酵市場
精密発酵セクターは近年急成長を見せており、取り組む企業は世界で約30社、投資総額は40億ドル(約5,600億円)に迫る勢いとなっています。今年3月にHartman Groupが実施した調査では、メリットを理解した米国人の77%が、精密発酵食品を試してみたいと考えていることが明らかとなりました。
Perfect Dayはすでに、アニマルフリーの乳清(ホエイ)タンパク質を、ネスレやマースなど多数のメーカーの代替乳製品にGRAS原料として提供中。
もう一つの乳タンパク質であるカゼインの認可を取得した例はまだありませんが、米New Cultureは先日、カゼインの生産プロセスを量産レベルまでスケールアップさせることに成功したと発表しています。
Imagindairyは、持続可能なフードシステムを実現するソリューションとしての微生物発酵を支持するため、同分野のリーダー企業9社によって創設されたPrecision Fermentation Allianceのメンバー。また、精密発酵企業の欧州における規制認可促進を目的とした企業連盟、Food Fermentation Europeの一員としても活動を行っています。
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