英Clean Food Group、発酵ベースの代替パーム油の市場投入に向けて約4.3億円を調達
英国のバイオテクノロジー企業Clean Food Groupが、230万ポンド(約4億2,500万円)の資金調達を行ったと発表しました。持続可能な発酵ベースの代替パーム油の商用化と、規制認可の促進に充てるとしています。
油を生産する油性酵母を活用
同ラウンドには、Döhler、Alianza Teamなどに加え、複数の培養肉企業へ投資を行っているAgronomicsが参加。Agronomicsは昨年6月にも約90万ポンド(約1億6,600万円)を投資しており、今回のラウンドでは70万ポンド(約1億2,900万円)を拠出。今回の調達を受け、これまでの累計調達額は1,000万ポンド(約18億5,000万円)に達しました。
来年にはシリーズAラウンドを控えており、大規模生産施設に投資を行う予定。それに先立ち、パーム油代替品の市場投入の準備を整え、近い将来の収益創出に向けた明確な見通しを立てられると見込んでいます。
Clean Food Groupの持続可能なパーム油代替品は、油性酵母*1 に食品廃棄物を与えて発酵させる製法。再生可能エネルギーを利用し、温室効果ガス排出量を従来のパーム油と比べ90%削減できるとのこと。
同社は、化粧品・食品用途の規制認可を受けるための製品バッチを、年内にも準備する計画。遺伝子組み換えを用いていないことから認可取得も比較的スムーズとみられ、今後数年間で製品発売にこぎ着けたいとしています。
環境破壊や人権侵害に関連するパーム油生産
今やスーパーマーケットの棚に並ぶ商品の半数に使用されているといわれるパーム油。その生産量はこの半世紀で35倍に増加し、2050年までにはさらに3倍以上増加すると予測されています。
しかしながら、そのプランテーションのためにインドネシアやマレーシアの熱帯雨林が伐採され、CO₂排出増加の要因に。オランウータンやサイなどの野生動物にとっても深刻な脅威となっています*2。
さらに、パーム油産業は先住民コミュニティから土地を奪い、労働者を劣悪な労働条件で搾取するなど、人権侵害にもつながっていることが指摘されています*3。
このため、Clean Food Groupの技術は、気候に悪影響を与える油脂の代替品を供給するという意味でも極めて重要。同様の革新的な取り組みを行う企業としては、米国のC16 Biosciencesが、同じ油性酵母を使った化粧品グレードの「Palmles Torula Oil」を発売。化学的にも機能的にもパーム油に限りなく近く、先日英国のPANGAIAとスキンケアブランドのHaeckelsがコラボした固形石鹸にも使用されました。
米Zero Acre Farmsは、油性酵母を使用しているかどうかは明らかにしていませんが、発酵ベースの調理油「Cultured Oil」を発売。エストニア企業のÄIOも、精密発酵による代替脂肪と併せて、油性酵母を用いたパーム油代替品の開発を進めています。
*1 酵母に分類される菌のうち、さまざまなバイオマス由来の糖を原料として油を生産し、乾燥重量の20%以上の油を菌体内に蓄積できる菌。
*2 https://orangutanalliance.org/whats-the-issue/
*3 https://www.forestpeoples.org/en/report/07-2022/human-rights-impacts-palm-oil-guidance
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