培養肉パウダーの研究開発を進める韓国のSimple Planetが、約9億円の資金調達を実施
韓国の培養肉スタートアップSimple Planetが、プレシリーズAラウンドで80億ウォン(約8億9,900万円)の調達を行ったと発表しました。培養肉パウダーを製造する技術の最適化と、規制当局の認可取得、国際的な事業拡大を目指します。
細胞培養による高栄養な食品原料
最終的に応募超過で終了した同ラウンドには、POSCO Technology Investment、DCP Private Equity、Hyundai Technology Investment、Prologue Ventures、Pathfinder H、Samho Green Investmentなどが参加しました。
2021年に設立されたSimple Planetは、完成品を作るのではなく、タンパク質や不飽和脂肪酸などを粉末状やペースト状にした培養食品原料を開発。
汎用性に優れ、タンパク質の吸収と風味や栄養価の改善(0.3gの培養肉パウダー中に、1kgの牛肉と同量の必須アミノ酸を含む)に役立つとされているほか、高齢者や乳幼児向け食品の機能性原料としても使用できます。
同社は「アグリ・フードテック界のフォーチュン500」を謳う英国の「Forward Fooding FoodTech 500」に選出されたほか、複数の賞やピッチコンテストでも優勝するなど、その技術で高い評価を得ています。
FBSからの脱却で培地コストを低減
Simple Planetはこれまでに牛、鶏、豚、アヒル、魚で13種類の細胞株を樹立し、プロバイオティクスをベースにした可食性の無血清培地を開発。培養肉生産コストの80%を占めるというウシ胎児血清(FBS)を使用しない製法で、培地コストを60分の1にまで低下させました。
共同創業者でCEOのDominic Jeongによると、昨年から世界的な食品企業と協力して培養肉のプロトタイプを開発しており、細胞培養食品原料の大規模生産を行うGMP(適正製造規範)適合施設の建設を進めているといいます。
高タンパク質の培養肉パウダーを国内外で発売することを目指しており、より迅速に市場参入を果たすため、米国とカナダに支社を設立する計画も発表。
昨年には、韓国を代表する植物性食品メーカーのPulmuoneと提携し、2025年の発売を目標にハイブリッド肉製品の共同開発に乗り出しました。また、B2Cのインスタント食品ブランド「Balboa Kitchen」を立ち上げ、培養原料を消費者向け製品に直接組み込むことも目指しています。
韓国培養肉セクターの動向
培養肉セクターが活発な動きを見せる韓国では、昨年2月、28の業界関係者が韓国の培養肉産業を発展させるという内容の覚書を締結し、その1カ月後に慶尚北道で細胞農業支援センター(North Gyeongsang Cellular Agriculture Industry Support Center)が開設。
この約2,300平方メートルの施設は、バイオ素材の開発と培養肉企業の支援を目的に、総額90億ウォン(約10億1,000万円)を投じて建設されました。
こうした動きの背景には、食品医薬品安全処(MFDS)が定めた2022年の国家計画に、培養肉の安全性・生産工程・規制認可を網羅する、代替プロテインに関する公式ガイダンスが盛り込まれたことがあります。
スタートアップ企業の動きとしては、培養シーフードのパイオニア企業CellMEATが、培養エビやキャビアのプロトタイプを開発しており、2021年12月にはウシ胎児血清(FBS)を使わない培地も実現。細胞農業ではそのほか、TissenBioFarm、CellQua、Space F、SeaWithなどが挙げられます。
大手企業では、CJ CheilJedang(CJ第一製糖)がKCell Biosciencesと提携して、釜山に大規模な培地工場の建設計画を打ち出していました(現在の進捗は不明)。
「辛ラーメン」を展開するNongshim(農心)も、培養肉に焦点を当てたフードテック分野のベンチャーファンドに100億ウォン(約11億2,000万円)の投資を行うことを発表しています。
参考記事:
South Korea’s Simple Planet Raises $6M in Pre-Series A Round to Speed Up R&D for Cultivated Meat Powder
Korea’s Simple Planet Secures 8 Billion Won Investment for Cell-Cultured Food Innovations | AsiaTechDaily
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