ニュージーランド政府、培養シーフードの開発に約8.6億円の資金拠出を決定

ニュージーランド政府が、培養シーフードを開発するための5カ年計画に対して960万ニュージーランド・ドル(約8億6,300万円)を拠出すると発表しました。

培養魚とコラーゲンの開発を計画


この助成金は、ビジネス・イノベーション・雇用省(MBIE)が実施する「Endeavour Fund」の一部。今年だけでも19の研究プログラムと53のSmart Ideaプロジェクトに、総額2億3,600万ニュージーランド・ドル(約212億円)が投入されてきました。

本プロジェクトでは、農業、水産業、食品・飲料産業の将来性と価値向上を目的とした国営の研究機関Plant & Food Researchが主導する、地域に根ざした培養シーフード製品の開発を支援します。

Plant & Food Researchは、魚の細胞培養に対する理解を深め、最適な培養条件を特定して、培養魚と細胞ベースのコラーゲンという2つの用途の開発を進める計画。

細胞水産業の研究リーダーを務め、本プロジェクトを率いるGeorgina Dowdは2年前、Plant & Food Researchで開発した魚類細胞株をほかの企業に活用させ、培養シーフード生産を支援する計画を語っていました。

迅速かつ大量に増殖できる細胞や、アニマルフリーで持続可能な手法で生産される培地といった要件をクリアすることで、ニュージーランドを「細胞株と培地の開発における技術的最前線」に位置付けたいとしています。

このプロジェクトは同時に、同国の先住民族であるマオリ族の視点や、彼らの文化にとって重要なマグロ、ザリガニ、ムール貝などの種に関する懸念も考慮。ニュージーランドが培養シーフードを受け入れることに関連する、社会的・文化的な側面についても精査します。

変革の必要性に迫られる水産業


ニュージーランドの水産養殖業は、2035年までに売上高4倍増を目指していますが、気候変動と海水温の上昇により多大な損失を被る可能性があると予測されています。

昨年、ニュージーランド政府の報告書が底引き網漁の環境影響を指摘したことで、同国で行われているこの漁法は世間から大きく非難を浴びました。

消費者も気候変動が漁業に与える影響を認識しており、最近の22,000人を対象とした世界規模の調査では、30%の人が過去2年間に魚介類を食べる量を減らし、48%が乱獲を、35%が気候変動の影響を懸念していることが判明しています。

それに加えて、研究リーダーのDowdは感染症による脅威を指摘。「国際獣疫事務局(WOAH)が定めた感染症の一つがニュージーランドに上陸し、水産業に影響を及ぼすのは時間の問題だ。システムやパイプラインを整備しない限り、私たちは本当に危険にさらされている」と危機感を表し、培養シーフード開発の重要性を強調しています。

参考記事:
Government funding for developing fish products in the lab · Plant & Food Research
New Zealand Government Invests $5.95M to Develop Cultivated Seafood
Georgina Dowd: Fish in a dish  · Plant & Food Research

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