マイコプロテイン大手のQuorn、英国・米国の代替肉売上減少で苦戦

Quorn」や「Cauldron」などのブランドを保有するMonde Nissin傘下の英Marlow Foodsが、コスト上昇、売上の低迷などを背景に、昨年度1,550万ポンド(約28億2,000万円)の赤字となったことを発表しました。

原材料の値上げが大きく影響


概して苦しい経済状況に陥っている代替肉セクターにあって、Marlow FoodsのマイコプロテインをベースとしたQuorn製品の小売売上高は、グローバル事業全体で前年比4.3%減1億9,290万ポンド(約351億円)となりました。

同社によると、ロシア・ウクライナ戦争による物価高騰の影響が大きいとのこと。エネルギーコストの上昇に加え、グルコースや卵白など原材料の値上げが、さらにコストを押し上げる要因となりました。

QuornのCEOを務めるMarco Bertaccaは、「消費者へのコスト転嫁を避け、可能な限りの低価格を維持しようと日頃から努めているが、その結果として本年度の事業は赤字となった」と語っています。

フードサービス部門の売上高は前年比43.7%増の2,830万ポンド(約51億4,000万円)で、ファストフード部門は同81.1%増の670万ポンド(約12億2,000万円)。

パンデミック後に外食産業での売り上げが増加したため、総売上高は同1.3%増2億2,790万ポンド(約414億円)と微増にとどまったものの、この伸びは現在のインフレ率にはるかに及ばず、製品販売量が減少したことを示しています。

The Grocer』誌が公表したNielsenIQのデータによると、Marlow Foodsは新製品の発売、欧州全域のKFCでの販売、21,000の流通拠点の拡充などにより、市場シェアを1.5%増の31.7%にまで伸ばしたにもかかわらず、QuornおよびCauldron製品の小売販売量は、それぞれ10.9%22.6%減少。

生活コストの上昇や、外出が増え購買習慣が変化したことにより、代替肉需要が減少したためとみられます。

英国・米国の代替肉市場で苦戦


Quornの苦戦は、米国の植物性代替肉市場が直面する現状を反映しています。今年8月、この分野で大手のBeyond Meatは、売上高30%減、純損失5,350万ドル(約80億3,000万円)を計上し、通期の売上予測を下方修正。年内のキャッシュフロー黒字化という目標を後ろ倒しにしました。

参入企業が増加したことで市場が飽和状態になってきていることもあり、NowadaysTattooed Chefなど、事業停止に陥る企業も増加。

Marlow Foodsの親会社であるフィリピンのMonde Nissinは、今年初めの決算報告で損失を計上したことを受け、Quornの米国事業を再編。CEOのHenry Soesantoは、「米国での計画は過剰投資だった」と認めています。

欧州で2番目に大きなヴィーガン市場である英国でも、植物性食品の売上は低迷。研究開発への投資総額も、過去10年間で培養肉に抜かれています。GFI Europeによると、英国では2021〜22年にかけて植物性食品の売上が3%減少し、植物性代替肉は同期間に8%減少しました。

ネスレが保有する「Garden Gourmet」と「Wunda」ブランドの撤退を決断し、スウェーデンのOatlyも植物性アイスクリームの全商品を撤退させるなどの動きが見られます。

GFI Europeは、他国に後れを取らないためには、代替プロテイン分野に対する3億8,000万ポンド(約691億円)の投資が必要と提言。Green Allianceのレポートでは、的を絞った投資と規制の適切な組み合わせにより、英国の代替プロテイン産業は2035年までに年間68億ポンド(約1兆2,400億円)の規模になり、25,000人の雇用を創出する可能性があるとされています。

関連記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。