英Meatlyが培養鶏肉を配合したキャットフードを発表、3カ月以内に認可取得見込み

英国企業のMeatly(旧称:Good Dog Food)が、培養鶏肉を用いたキャットフード缶を開発したと発表しました。

開発にあたり、獣医のGuy Sandelowskyが設立した英国で急成長中のヴィーガンペットフードメーカー、Omniと提携。3カ月以内に規制当局からの販売認可取得を見込んでおり、英国を含む欧州で培養肉製品を販売する初の企業になることを目指しています。

ペットの食事に起因する環境負荷を低減


Meatlyは今月初めに、培養ペットフード缶の初回生産を完了。Omniのペットフードに含まれる豆類や野菜と、Meatlyの培養鶏肉を組み合わせたハイブリッド製品となっており、150g缶(1食分)の価格は約1ポンド(約193円)を想定しています。

豆類、藻類、酵母タンパク質から作られた植物性ドッグフードを開発してきたOmniにとって、培養肉市場への進出は初。

Meatlyによると、世界のペットフード業界は年率7%の成長を続けており、2026年には1,200億ポンド(約23兆1,000億円)規模になると予想されていますが、この成長とともにペットフード産業が環境に与える影響も急速に増大しています。

現在英国で消費されている食肉の22%がペットの食事となっており、これに由来する温室効果ガス排出もかなりの量に。Meatlyは、持続可能で美味しく栄養価の高い食肉を生産し、工業的畜産への依存を減らすことで、この問題に取り組んでいます。

市場化で先行が予測される培養ペットフード


Meatlyは1個の鶏卵から細胞のサンプルを抽出し、これを培養して鶏肉を生産。生産過程ではウシ胎児血清(FBS)などの動物由来成分はもちろん、成長因子、足場、マイクロキャリアも使用していないといいます。

同社は現在、英国環境・食糧・農村地域省(Defra)に認可申請を提出済みで、3カ月以内に承認が得られる見込みとのこと。創業者でCEOのOwen Ensorは「年内の発売を目指したい」と話しています。

ヒトの食用としての培養肉の認可プロセスについては、英国はブレグジット前の体制を維持しており、EUの「新規食品(Novel Food)」規制が適用されています。

英国政府は昨年から認可プロセスを加速させる方針を打ち出していますが、ブレグジット後の自由を十分に活用できていないと批判も受けているのが現状。

英国食品基準庁(FSA)で政策担当ディレクターを務めるRebecca Sudworthは、「誰も食べたことのない新規食品に対しては、リスクアセスメントを適切に行わなければならない」とし、培養肉をヒトの食用として認可するには少なくとも2年はかかるだろうと述べました。

一方、ペットフードでは規制に係る負担がはるかに少ないため、市場化で先行するとみられています。

猫の菜食主義は健康に良い可能性も


従来、完全肉食動物であるネコは肉の消費量を抑えることはできないため、ヴィーガン食を与えることは健康に悪いのではという指摘がありました。Meatlyのキャットフードも、100%培養鶏肉で作られるわけではない以上、同様の懸念は避けられません。

しかし、昨年1,369匹の飼い猫を対象に行われた調査では、植物ベースの代替食は、ネコにとっても肉食と同等以上に健康的である可能性が示されています。

研究チームを率いたAndrew Knightは、生物学的にネコに必要な栄養素は肉類ではなく、特定の栄養素(タンパク質、タウリン、ビタミンA、ビタミンB12など)であり、これらは植物性のサプリメントで摂取することができると『The Guardian』誌に語っています。

細胞培養によりペットフードを製造するのは、Meatlyのほかに、BioCraft Pet Nutrition(ネズミ肉のキャットフードを生産)、Marina CatCULT Food ScienceUmami Bioworksの提携によるブランド)、Wild Earth(培養鶏肉のドッグフード製造)など。

チェコのBene Meat Technologiesは昨年11月、EUで飼料原料として培養細胞の登録を行い、2024年初頭にも発売予定としていました(EUでは、動物用飼料原料の市販前承認は不要)。

参考記事:
Britain’s first lab-grown meat: it’s for cats
UK Regulatory Approval for Cultivated Meat Looms with New Proposed Rules, As Meatly Expects Greenlight for Pet Food Within 3 Months
FAQs | Meatly | Real Meat Made Better

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