ニュージーランドの乳業大手フォンテラ、新製品にNourish Ingredientsの代替脂肪を採用
ニュージーランド9千戸の酪農家による協同組合で、グローバルに展開する乳業会社でもあるフォンテラが、オーストラリア企業Nourish Ingredientsとの提携を発表しました。
Nourish Ingredientsの精密発酵による代替脂肪「Creamilux」を使用した製品の開発を共同で行う計画です。
口当たりと味を改善する機能性成分
Nourish Ingredientsは、4月にサンフランシスコで開催されたイベント「Future Food-Tech」で、代替脂肪「Creamilux」を使用した乳製品とチョコレートを披露。
さまざまな用途で食品の乳化を助け、口当たりと味を改善するというこの原料は、初めての試食の機会にフォンテラのチームに感銘を与え、今回の提携に至ったといいます。
提携の第一弾として、両社はクリーム、チーズ、バターなど従来の乳製品の開発を実施。乳製品の風味を保ちながら機能性を引き出す重要な成分として、Creamiluxを活用します。
両社はまた、通常乳脂肪に依存しているベーカリー製品などを、精密発酵脂肪によって強化する可能性も探求する計画。フォンテラはこの取り組みを通じて、現在の中核事業である乳製品以外の新たな製品セグメントに参入する狙いです。
なお、生産コストや市場投入のチャネル、具体的なスケジュールなどの詳細については明らかにされていません。
低い含有率で効果を発揮
Nourish IngredientsのCEOを務めるJames Petrieは、フォンテラについて「商業化を可能な限り早めてくれる素晴らしいパートナー」だとコメントしました。
同社はこれまで、細胞農業界の企業に早くから投資を行ってきたHorizons Venturesなどから、総額3,960万ドル(約60億9,000万円)を調達。
植物性代替肉用の脂肪「Tastilux」を開発し、シンガポールでの販売認可を待っている段階ですが、「Creamilux」で新たに代替乳製品の分野にも進出しました。
同社の代替脂肪の特徴は、非常に低い含有率(最終製品の1%未満)でも効果を発揮すること。含有率が低いということは、コストや生産能力の面で影響が小さいということであり、添加物や乳化剤を避けることでクリーンラベル製品の実現にも寄与します。
環境汚染企業からの脱却へ
ニュージーランド最大の企業であるフォンテラは、同国が乳製品の輸出で世界をリードする上で大きな役割を果たしてきました。
ですがその一方で、フォンテラの昨年の温室効果ガス排出量は2,680万トン超と、環境フットプリントの極めて高い国内最悪の汚染企業ともなっています。
同社は10年後までに酪農由来の排出量30%削減を約束しているものの、先住民であるマオリ族の指導者が酪農と化石燃料事業者のグループに対して起こした気候変動関連の訴訟に、現在も直面している状況。
さらに、研究開発費の5倍以上をマーケティングとPRに費やしていることがChanging Markets Foundationのレポートにより明かされ、「グリーンウォッシュ」だと非難されています。
汚染企業からの脱却を目指す同社が精密発酵業界に参入したのは、2022年。メタンガスを削減する独自技術を持ったDSM-Firmenich Venturingとの合弁で、乳タンパク質の一種β-ラクトグロブリンを生産するスタートアップ企業Viviciを立ち上げました。
Viviciの乳タンパク質は、今年2月に米国でGRAS自己認証を取得し、B2B供給を開始しています。
参考記事:
Nourish Ingredients and Fonterra join forces
Creamilux: Dairy Giant Fonterra to Use Nourish Ingredients’ Animal-Free Fat in New Products
Nourish Ingredients teams with Fonterra on dairy products with novel fats – Future Alternative
Designer lipids startup Nourish Ingredients collaborates with dairy giant Fonterra on fats from fermentation
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