UPSIDE FoodsとInstitute for Justice、培養肉の禁止措置を違憲としフロリダ州を提訴

米国の培養肉企業UPSIDE Foodsと非営利の法律事務所Institute for Justiceが共同で、フロリダ州で施行された培養肉禁止法の差し止めを求めて連邦裁判所に訴訟を提起しました。

同法は「州外の競合企業を犠牲にして州内の企業を優遇する」ものであり、保護主義的措置に関する憲法の規定に違反していると主張しています。

畜産関係者の利益を守る法律


本訴訟は、フロリダ州で2024年5月1日に制定、同7月1日に施行された培養肉の生産・流通・販売を禁止する法律に関するものです。

Institute for Justice所属の弁護士Paul Shermanは、禁止措置は「消費者の選択を犠牲にして食肉生産者の利益を守ろうとするものだ」と批判。

「培養肉を食べてみたいと思う消費者に対し、食べてはいけないと言う権利は政府にはない。畜産関係者による激しいロビー活動の末に成立したこの法律は、イノベーションを阻害して凝り固まった既得権益を保護するためのものだ」と語っています。

フロリダ州のWilton Simpson農業委員とRon DeSantis州知事が、保護主義的な意図からこの法律を推し進めているのは公式の声明からも明らかであり、Simpsonは「我々は素晴らしい農家と米国農業の健全性を守らなければならない」とコメント。

DeSantis州知事は、培養肉は「従来の農業にとって脅威となるよう設計されている」とし、これを初期の段階で消し去ろうと取り組んでいると述べていました。

培養肉は従来の食肉を「補完」するもの


2015年に設立されたUPSIDE Foodsは、本物の鶏の細胞から培養鶏肉を開発。動物の飼育や屠殺の必要性をなくすと同時に、食中毒や汚染など、現代の畜産が抱えるリスクを減らす解決策を提示しています。

昨年GOOD Meatとともに、米国農務省(USDA)および米国食品医薬品局(FDA)安全性認可を受けた最初の培養肉企業となりました。

同社は、禁止法施行直前の6月27日にフロリダで試食イベントを開催しており、来月にもロサンゼルスとシカゴで開催されるイベントで培養鶏肉を提供する予定。

共同創業者でCEOを務めるUma Valetiは、100億人に向かって増加を続ける地球上の人間のニーズを満たすには資源が不足していることに触れ、培養肉は従来の食肉と「競合するものではなく、補完するもの」だと強調しています。

憲法の2つの条項への違反を指摘


Institute for Justiceは、合衆国憲法の2つの条項、「通商条項(Commerce Clause)」と「最高法規条項(Supremacy Clause)」を挙げ、同法の違憲性を指摘。

「通商条項」の下では、連邦政府は州間の商取引を規制する排他的権限を有し、州政府がそれを妨げたり差別したりすることは制限されています。

また、UPSIDE Foodsの製品はUSDA、FDAの厳しい審査を経て食用として安全であることが確認されており、すでに販売が認められているもの。この2部局の決定は「最高法規条項」に規定されているとおり、それに反する州法に優先するものとなります。

これらの条項が適用された過去の判例としては、1977年にWashington State Apple Advertising Commissionが提起した訴訟で、州内で流通するリンゴにUSDA等級のみの表示を義務付けていたノースカロライナ州法が「通商条項」を理由として廃止に。

表面的には中立的なものに見える同法ですが、UDSA等級よりも高い等級を誇る他州産のリンゴが不利になるよう意図されたものでした。

また、2011年に全米食肉協会(現:北米食肉協会)が起こした裁判では、連邦最高裁が全員一致で「最高法規条項」を適用。食肉業者や加工業者による歩行困難牛の取り扱いを制限したカリフォルニア州法が廃止されています。

消費者の行動自体を制限すべきではない


Shermanは以上のことから、USDAとFDAによって承認された製品を各州が独自に禁止する権限はないと指摘。もし培養肉を嫌う消費者がいるなら食べなければいいだけであり、消費者の行動自体を制限すべきではないとしています。

同じくInstitute for Justiceに所属する弁護士のSuranjan Senは、「カリフォルニア州がフロリダ産のオレンジで作られたオレンジジュースを禁止できないのと同じ理由で、フロリダ州はUPSIDE Foodsの肉を禁止できない」と説明。

「憲法が制定された主な目的は、まさにこの種の保護主義を防止し、すべての米国人が自由で開かれた国内市場から利益を得られるようにすることであった。フロリダ州は、州内の企業を競争から守るためだけに、他地域で合法的に販売されている製品を禁止することはできない」と語っています。

参考記事:
Institute for Justice Files Lawsuit Challenging Florida’s Ban on Cultivated Meat – Institute for Justice
Institute for Justice and UPSIDE Foods File Lawsuit Against State of Florida
Everything You Need to Know About Upside Foods’ Lawsuit Against Florida’s Cultivated Meat Ban

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