製薬大手Zydus LifesciencesとPerfect Dayが提携、インドでアニマルフリータンパク質の生産拠点設置へ
インドの製薬大手Zydus Lifesciencesが、ムンバイに本社を置く製造会社Sterling Biotechの株式50%をPerfect Dayから取得することで合意したと発表しました。
合弁事業として、世界市場向けにアニマルフリータンパク質を生産するための専用施設を共同で立ち上げる計画です。
取得価額を大幅に上回る売却で合意
Zydus Lifesciencesは製薬会社としてインド第4位の規模を誇り、全世界に30以上の工場と27,000人以上の従業員を擁する企業。
ワクチン、治療薬、生物学的製剤、バイオシミラー(バイオ後続品)などの革新的なソリューションを中心に、さまざまなヘルスケアサービスを提供しています。
Sterling Biotechは2018年に破産した後競売にかけられ、米Perfect Dayが7,800万ドル(約113億円)で買収した企業。現在、インド西部グジャラート州に位置する2カ所の製造施設で、リン酸二カルシウムや製薬用ゼラチンなどの製造を行っています。
Zydus Lifesciencesは、Sterling Biotechの株式50%をPerfect Dayから55億ルピー(約94億5,000万円)で取得。昨年Sterling Biotechの収益が好調であったことを背景に、2022年の取得時からは70%(インフレの影響を加味しても60%)のプレミアムを上乗せした価格で合意に至りました。
今後は、株式を半数ずつ持つ両社が、Sterling Biotechの取締役会において同等の代表権を持つこととなります。
新たな施設立ち上げで、インドを代替プロテインの製造ハブに
Zydus Lifesciencesによると、この合弁事業の目的は、インドを持続可能なタンパク質の世界的なサプライチェーンハブに変え、食品生産による環境への影響を軽減し、倫理的な栄養需要の高まりに応えること。
Zydus Lifesciencesの製造ノウハウとPerfect Dayの高度な精密発酵技術を融合させ、既存事業と並行して、世界市場向けにアニマルフリータンパク質を生産する専用施設を設立する計画です。
この動きは、インドが先週発表したばかりの、経済と気候に焦点を当てた先進的な「BioE3」政策の目標にも沿ったもの。
バイオものづくりのハブやバイオファウンドリの設立により技術開発と商業化の加速を目指すこの政策では、代替プロテイン(スマートプロテイン)を6つの重点分野の1つに位置付けています。
世界最大の人口を抱えるインドで排出量の15%を占めている農業(その3分の2は畜産由来)の変革が政策の柱とされたことは、気候変動対策において大きな意味があるといえるでしょう。
昨年から動きの多いPerfect Day
2014年創業のPerfect Dayは、精密発酵によるアニマルフリーの乳清タンパク質生産に特化。
ユニリーバ、Strive Nutrition、Tomorrow Farmsとの提携や、D2C子会社のThe Urgent Companyを通じて、米国でアイスクリームやミルク、ヨーグルトといった代替乳製品を市場に送り出してきました。
現在はB2Bに重点を置く成長戦略にシフトし、The Urgent Companyを売却。提携による製品発売と精密発酵コンサルティング事業に注力しています。
同社はSterling Biotechの買収後、インド食品安全基準局(FSSAI)からも市販前認可を取得。世界の牛乳生産量の25%を占め、世界最大の生産国となっているインドで、革新的な乳タンパク質の販売が可能な体制を整えました。
しかしその後、この買収の際に契約違反や隠蔽があったとして、別の委託製造業者Olonから訴訟を起こされ、いまだ係争中です。
参考記事:
Pharmaceutical Giant Zydus & Perfect Day Partner to Make India an Animal-Free Protein Hub
Zydus to Acquire 50% Stake in India’s Sterling Biotech from Perfect Day, Will Open Animal-Free Dairy Factory
Zydus Life shares sink as analysts wary of ‘premium’ Sterling Biotech buy | News on Markets – Business Standard
Explained: What India’s BioE3 Policy Means for the Alternative Protein Industry
この記事へのコメントはありません。