エストニアのÄIO、おがくずを代替油脂に変えるデモ生産施設の建設に向け約9.7億円を調達
エストニアの精密発酵企業ÄIOが、パーム油や動物性脂肪に代わる発酵由来原料の生産施設を建設するため、610万ユーロ(約9億7,000万円)の資金調達を完了したと発表しました。
農業副産物を発酵に活用
おがくずから抽出される糖分など、農業や木材加工から出る副産物を持続可能な食用油脂へと変えるÄIOは、昨年にも100万ユーロ(約1億5,900万円)を調達。
今回のラウンドでは、Voima Ventures、2C Ventures、Nordic Foodtech VC、エストニア政府やEUが支援するSmartCap Green Fundなどが投資を行いました。
ÄIOは、共同創業者のNemailla BonturiとPetri-Jaan Lahtveeによる研究を基盤として、2022年にタリン工科大学(TalTech)からスピンオフする形で誕生した企業。
Bonturiが生み出し特許を取得した「赤色酵母(red yeast)」と、おがくずから抽出した糖分を活用し、ビール醸造やパン製造に似たプロセスで発酵を行います。
出来上がった油脂は必須脂肪酸と抗酸化物質を豊富に含んでいるほか、環境にも優しいのが強みで、現在のパーム油や動物性脂肪の生産に比べ土地の利用を最大97%、水の消費を90%削減することが可能。さらには、発酵による油脂生産のスピードは従来の10倍速くなるといいます。
持続可能性の問題を抱えるパーム油生産
スーパーマーケットで売られている商品の半数に含まれるというパーム油。一度加工されると無味、無臭で安価、高温に耐え、天然の保存料としても機能するためメーカーが好んで使用してきた歴史があり、パーム油は世界の植物油需要の40%を占めているほど身の回りにあふれた存在となっています。
しかしながら、大規模プランテーションによるパーム油生産は、地球全体の排出量の5分の1近くを占めているという熱帯林伐採の主な原因となってきました。
また、インドネシアとマレーシアに集中するプランテーションは近年、広範な山火事の直接的な原因ともなり、野生動物や先住民族のコミュニティに対する脅威を与えていることが問題視されています。
2026年の完工を予定
ÄIOはこれまでに3種類の油脂を開発。食品用途のパーム油を代替する「Encapsulated Oil」、動物性油脂やショートニング、ココナッツオイルの代替となる「Buttery Fat」、そして魚油や種子油を代替でき、化粧品や日用品の原料としても使える「RedOil」をラインアップしています。
昨年には、同じエストニア企業のFibernolと協力して、木材加水分解物を微生物オイルに変換する試みにも着手しました。
国内外の120以上のパートナー企業が、原料となる副産物の提供や油脂のテストを行っているほか、食品、化粧品、日用品を扱う大手企業からも関心を集めており、製品の共同開発契約を結んでいます。
建設を計画中のデモ生産施設はこれらの需要に応えるもので、完成すれば数十トンの生産が可能になる予定。場所は未定ですが、2026年までの完成を見込んでいます。
参考記事:
Estonia’s Äio Secures €6.1M for Demo Facility to Turn Sawdust Into Palm Oil & Animal Fat Alternatives
Estonian food tech startup Äio secures €6 million to turn wood into oils
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