米スターバックス、北米の店舗で代替ミルクの追加料金を撤廃
世界最大のコーヒーチェーンとして人気のスターバックスが、米国とカナダのすべての直営店で、乳製品フリーの代替ミルクに適用していた追加料金の廃止を決定しました。季節限定メニューの発売に合わせて、今月7日から価格が改定されます。
幅広い消費者ニーズにより深く対応
一部の都市では80セント(122円)に上った代替ミルクへの追加料金。顧客は間もなく、この追加コストを支払うことなく豆乳やアーモンドミルク、ココナッツミルク、オーツミルクなどでドリンクをカスタマイズできるようになります。
メキシコ料理チェーン「チポトレ」の経営再建に尽力した後、8月にスターバックスの新CEOに就任したBrian Niccolによると、この決定は誰にとっても居心地の良いコーヒーハウスとしてのブランドイメージを活性化させる動きに加えて、メニューを簡素化し価格体系を見直す戦略の一環。
「当社が提供する顧客体験の核心は、ドリンクを自分好みにカスタマイズできることだ。代替ミルクの追加料金をなくすことで、お客様がスターバックスを楽しむあらゆる方法を受け入れたい」とコメントしました。
現在、スターバックス利用者の間で乳製品フリーの代替ミルクへの変更は、エスプレッソショットの追加に次いで2番目に人気のあるカスタマイズとなっています。
温室効果ガス排出、水や土地の利用など、あらゆる環境側面で優れていることから注目度が高まっている、植物由来の代替乳製品。さらには、ベジタリアンやヴィーガン、健康意識の高い消費者、乳糖不耐症や牛乳アレルギーを持つ人など、幅広いニーズにより深く対応するために不可欠な存在です。
2050年のネットゼロ達成に向けた一手
スターバックスは、1997年から豆乳の提供を開始し、顧客に乳製品フリーの選択肢を導入した最初のコーヒーチェーンの一つでした。
牛乳がカーボンフットプリントを高める最大の要因となっていることを認める同社は、2021年には精密発酵業界のパイオニア企業、Perfect Dayの乳タンパク質製品を試験導入。また、北米地域に先立ち、英国、ドイツ、フランスなどの市場でも、過去2年間で同様に代替ミルクへの追加料金廃止を実施しています。
同社は2050年のネットゼロ達成に向け、その途中経過として2030年までに排出量を半減させることを目標に設定。しかしながら、同社のカーボンフットプリントは前年度に8%増加していました。目標達成に向け環境対応のスピードアップが求められる中、植物性ミルクを推進する施策の導入は当然の帰結ともいえます。
Z世代が従来の乳製品を注文するのは恥ずかしいと感じているという調査もある中、米国における乳製品の消費量は過去最低を記録。その一方で、植物性ミルクの人気はますます高まっており、昨年は牛乳も含めたミルク市場全体の15%を占めていました。
本国で売り上げの巻き返しなるか
スターバックスの直近の決算報告によると、第3四半期(7〜9月)は全世界での売上高が前年同期比7%減少し、1株あたり純利益(EPS)も同25%低下。特に、2大市場である米国(売上高6%減)と中国(同14%減)では継続的な赤字に直面しています。
中国では、同社を抜いて国内最大のコーヒーチェーンとなったLuckin Coffee(ラッキンコーヒー)の躍進も見逃せません。中国でオーツミルクの普及に大きな役割を果たしたLuckin Coffeeは、現在米国進出の準備を進めているといい、スターバックスの売り上げ減少に対する新たな脅威となっています。
物価高騰が続く中、今回の追加料金廃止は、スターバックスの顧客の維持・回復に役立つでしょう。CEOのNiccolは、植物性ミルクの追加コストを顧客に転嫁する代わりに自社で吸収することは同社の収益に影響を及ぼすと認めた上で、「顧客の再度のエンゲージメントを喚起するための正しい投資だと確信している」と述べています。
参考記事:
Starbucks will stop charging extra for dairy alternatives
At Long Last, Non-Dairy Milk is Free at Starbucks As New CEO Looks to Turn A New Leaf
Starbucks To Remove Extra Charge For Non-Dairy Milk
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