インドのBiokraft Foods、2025年の培養肉発売に向け同国初の公開試食イベントを開催
インド・ムンバイを拠点とするスタートアップ企業Biokraft Foodsが先週、同国では初となる培養肉の試食イベントを開催し、来年の発売を目指すというハイブリッドチキンを披露しました。
インドのバイオテクノロジー分野で環境の整備と規制の明確化が進む中、新規食品に対する取り組みにも進展が見られます。
来年にも認可と市場投入の可能性
試食会には、GFI India、PETA India、Chamber for Advancement of Small & Medium Businesses (CASMB)、Brinc、Youth Organization in Defense of Animals India(YODA)、India Animal Fundなどから30名余りが参加。世界最多の人口を抱えるインドの食の未来にとって、画期的な出来事となりました。
原料の一部に培養鶏肉を用いたインド中華の定番メニュー、スライダーバーガー(小さなハンバーガー)とチリチキンが提供され、非常に好意的なフィードバックが得られたとのことです。
インドで培養肉開発の先頭に立ってきたBiokraft Foodsは、インド食品安全基準局(FSSAI)と緊密に協力しており、来年にも市場投入を実現できる見込みがあると楽観視しています。
創業者でCEOのKamalnayan Tibrewalによると、同社はすでに認可の下りている国で規制当局に提出される申請書類やデータから必要なものを鑑み、FSSAIに提示する準備を進めている最中。
インドで培養肉の認可申請が出された例はまだありませんが、「当局は、申請企業と製品がすべての基準を満たしていれば、承認プロセスには6〜8カ月もかからないと明言している」といいます。
培養細胞に植物・藻類ベースの原料をブレンド
2023年創業のBiokraft Foodsは、培養肉生産に3Dバイオプリンティングの手法を採用し、高度な工学・生物学の技術と融合させることで、鶏胸肉の構造、味、食感、栄養プロファイルを再現しています。
CEOのTibrewalは、「鶏肉に不可欠な官能的・物理的特性の実現に必要な全成分を含むバイオインクを独自開発した」と説明。製品の組成については、鶏の培養細胞に加えて、植物や藻類ベースのバイオポリマーを使用しているとのことです。
同社は今後も、より多くの人々を対象とした試食イベントを開催し、消費者と業界関係者の双方に培養肉を体験してもらい、フィードバックを得て製品の改良につなげる考えです。
FSSAIは、今年に入って培養肉・シーフードの規制枠組み構築に向けた検討を開始し、政府のバイオテクノロジー庁およびバイオテクノロジー産業研究支援協議会(BIRAC)と協力すると発表。9月に開催された食品安全サミットでは、ナッダ保健・家庭福祉大臣がこの枠組み構築の重要性を強調しました。
この動きの中、Biokraft Foodsも今年、培養魚の開発で政府機関のICAR-Directorate of Coldwater Fisheries Research(ICAR-DCFR)と協働しています。
高級鶏肉と同等の価格を実現
伝統的に肉を食べない習慣を持つ人が4割近くを占め、世界最大のベジタリアン人口を抱えるインドでは、健康の視点も相まって新規食品に対する需要が高まりつつある様子。
今年3月に実施された調査の結果では、インド人の60%以上が培養肉の購入にも前向きで、栄養面で優れた従来の肉の代替品として認識している人の割合も59%に上りました。
培養肉が一般に普及する上で重要な障壁の一つとなっているのがコストの問題ですが、Biokraft Foodsは飲食業界の需要に応えられるよう、競争力のある価格を実現。一般的に、インドで鶏肉はキロ単価150~250ルピー(約270〜440円)、B2B市場のプレミアム品では同300~600ルピー(約530〜1,070円)程度で販売されています。
同社では、B2B市場向けの目標価格を300〜350ルピー(約530〜620円)に設定。前述の調査では、回答者の46%が培養肉に10~30%のプレミアムを支払うと回答していることを考慮すると、有効な価格設定と考えられるでしょう。
また、2025年末までには独立した研究開発・生産拠点を設置する予定もあり、これによりさらなる低コスト化も見込まれます。
参考記事:
Kamalnayan Tibrewal | LinkedIn
India Hosts First Public Tasting for Cultivated Meat in Bid for 2025 Launch
India’s Health Minister Calls for Regulatory Reform of Novel Foods to Meet ‘Evolving Consumer Preferences’
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