米国の培養肉メーカーFork & Goodが、食品大手との共同開発契約で初の収益を計上

培養肉開発を進める米国・ニュージャージー州のFork & Goodが、創業以来初の収益を上げたと発表しました。共同創業者でCEOのNiyati Guptaが、技術開発の進捗や認可取得の計画も含めて『Green Queen』に語っています。

業界大手との共同開発契約が実現


Fork & Goodは2024年1月、スイス・ダボスのSonas Irish Pubで、欧州では初めて培養肉の一般向け試食会を開催。培養豚肉を30%、従来の豚肉を70%(ベジタリアン向けには、培養肉と植物由来原料)ブレンドした餃子を提供し、味覚のブラインドテストを行ったところ、試食者の過半数がFork & Goodの製品の方を好んだといいます。

それからちょうど1年が経ち、同社は80億ドル(約1兆2,000億円)規模の世界的食品メーカーとの間で共同開発契約を締結。これにより、創業以来初の収益を獲得し、大きなマイルストーンを達成しました。Guptaは相手の社名は明かしていませんが、「当社の技術が市場で実証されたことを示すもの」と語っています。

同社は現在、3社の顧客と契約を結んでおり、10社を超えるメーカーや小売業者とも交渉中とのこと。従来の食肉やプラントベース製品を補完する原料として、テストが行われているようです。

3つのインプット要素を最適化


Fork & Goodが創業した2018年当時は、アフリカ豚熱(ASF)で世界中の個体の25%が失われ、顧客企業がサプライチェーンの強化に苦慮していた頃。感染症によるショック、関税、需要の逼迫など、すべてが大きな変動要因となっており、製品の一貫性やコスト面での課題が顕在化していました。

Guptaは、最初期から培養肉開発の中心を担ってきたGabor ForgacsModern Meadowの共同創業者)と手を組み、共同で事業を開始。農業分野に長く身を置いてきた経験から、培養肉生産は「インプットをアウトプットに向けて最適化する」という点で水耕栽培に似ていると考えました。

「当社のプロセスもこれと同じで、家畜の体内よりも効率良く動物細胞を成長させるため、細胞株培地バイオプロセスという3つのインプット要素の相互最適化に基づいている」と説明しています。

具体的には、使用済みの培地の分析により細胞が何を消費するのか(例えば、どの種類のアミノ酸をどのくらいの濃度で消費するのか)を調べ、不死化した細胞株と、それに対応した培地を開発。また、細胞密度を最大化するため、接着細胞が凝集して成長するよう最適なコントロールが行えるバイオリアクター技術を採用しました。

米国とシンガポールで申請を進める


上記3つの要素を最適化した特許取得済みの培養プラットフォームに加え、連続式の下流工程を備えたパイロットプラントでは、800平方フィート(約74平方メートル)に満たないスペースで約7トンの生産が可能。

従来に比べはるかに小規模な施設(千リットルのバイオリアクター × 10基)で商業化に適した量のバイオマスを生産するまで拡大でき、1施設あたりのコストは1,000〜2,000万ドル(約15〜30億円)ほどで済むといいます。

Fork & Goodの目標とする価格設定は、一般的な豚肉に匹敵する1ポンドあたり2ドル(キロ単価約660円)。市場ターゲットは北米と東南アジアに設定しており、2年前から米国食品医薬品局(FDA)および米国農務省(USDA)と連携しているほか、シンガポールへの申請も進めているといいます。

同社はこれまでに、True Ventures、Starlight Ventures、BBG Ventures、ドイツの製薬大手バイエルのVC部門Leapsなどの投資家から合計3,000万ドル(約45億円)を調達。

昨年10月にシリーズA2ラウンドをクローズし、FDAからのフィードバックへの対応と、契約した顧客との取引に必要な資金を確保しました。さらに同じラウンドで、第1四半期末までに100万〜200万ドル(約1億5,000万〜3億円)の調達を準備しているといいます。

参考記事:$2 Cultivated Pork? Fork & Good on First Sales, Funding and the Future of FDA

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