デンマークのバイオテクノロジー企業21st.BIO、有害化合物のマイコトキシンを生成しない麹菌株を開発

デンマークのバイオテクノロジー企業21st.BIOが、発酵生産によく使われる糸状菌の一種、ニホンコウジカビAspergillus oryzae)の新たな菌株を開発したと発表しました。

菌類に含まれる可能性のある有害化合物のマイコトキシン(カビ毒の総称)を生成する既知の経路を、すべて除去するように設計されています。

精密発酵の新たなゴールドスタンダードに


Applied Microbiology and Biotechnology』誌に掲載された査読付き研究で報告されたこの新菌株は、アフラトキシンなどの不要な二次代謝産物を生成しないよう設計されました。

また、ペニシリンGの産生に関与する遺伝子を排除し、意図しない抗生物質が残留するリスクを低減しています。

研究チームを率いたJosé Arnauによると、この研究は、真菌を用いた生産システムの安全性に関する長年の懸念を取り除くもの。「糸状菌にまつわる最後の安全性の課題を取り除くことで、新規食品タンパク質の低コスト大規模生産における麹菌の可能性を解き放ちたい」としています。

2020年に設立された21st.BIOは、微生物生産プラットフォームで長年の実績を持つNovonesisからライセンス供与を受けた技術を核に、コペンハーゲンと米国・カリフォルニア州に研究開発施設を運営。

バイオテクノロジー企業に対し、菌株開発、発酵プロセス設計、規制認可の取得といったエンドツーエンドのサポートを提供しています。

欧州における規制の近代化を求める


糸状菌は、収量が高く、低コストで再生可能な材料で生育でき、スケールアップも容易であるなどの利点から、発酵ベースのタンパク質生産で注目を集めているものの、カビ毒に対する懸念がこれまで食品用途への広範な採用を遅らせてきました。

21st.BIOの新たな菌株はそうした懸念に対処するもので、すでに米国でGRAS(Generally Recognized As Safe:一般に安全と認められる)自己認証を取得した乳清タンパク質の一種、β-ラクトグロブリンの生産にも使用されているようです。

欧州連合(EU)において、食品・飼料に添加する微生物に対する市販前のリスク評価を行うQPS「Qualified Presumption of Safety:安全性適格推定)」制度では、一部の株が有害な特性を有する可能性があるため、糸状菌全体が評価対象から除外されています。

同社はEUの規制当局に対し、特定の菌株の特徴を考慮していない現行の安全性認可の枠組みをアップデートするよう要求。

Arnauは、「今日のツールでは、ゲノム配列解析と包括的な分子レベルの理解に基づき、菌株ごとの正確な安全性評価が可能。これにより、欧州の承認プロセスも迅速化されるはずだ」と語っています。

参考記事:
21st.BIO Engineers Safer Fungal Strain for Protein Production, Calls for EU Regulatory Reform
21st.BIO establishes a new gold standard in precision fermentation for safe novel protein production – Asia Food Journal

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