英Solena Materials、代替素材に用いる微生物タンパク質のスケールアップに向け約9.8億円を調達

英国・ロンドンに拠点を置くSolena Materialsが、ファッション業界にプラスチックフリーの代替品を提供する微生物タンパク質繊維の拡大に向け、シードラウンドで670万ドル(約9億7,800万円)を調達したと発表しました。
AIとバイオものづくりの組み合わせ
同ラウンドは個人投資家のDavid Harding(Winton Groupの創業者でCEO)に加えて、合成生物学分野への投資を行うSynBioVen、油性酵母を用いて代替油脂を生産するドイツのスタートアップ企業Insempraが主導。
Solena Materialsは3年前にプレシードラウンドでの調達を実施しており、累計調達額は1,080万ドル(約15億8,000万円)に達しました。新たな資金を得て、生産規模を増やせるより大きな施設へと移転する計画で、新規タンパク質繊維の大規模生産という目標に一歩近づいています。
同社は、人工知能(AI)を活用して独自のタンパク質繊維を設計し、それを遺伝子組み換えを施した微生物に作らせることで、従来の衣料用繊維に代わるプラスチックフリーで生分解性の代替品を提供。
共同創業者でCEOのJames MacDonaldは、「自然界に存在しないタンパク質配列を作り出して、必要とする性能と、高い製造可能性を両立させている」と説明しています。
同社は今後3年以内に、ファッションブランドと提携して製品化を目指しているとのこと。繊維・ファッション産業はすでに世界の排出量の10%近く(航空セクターよりも多い)を占めており、このままいくと2030年までに50%以上急増すると予測されていることから、代替品の開発が急務となっています。
ファッションの持続可能性問題に対する答え
Solena Materialsは、MacDonaldとPaul Freemont、Milo Shaffeの3人が2022年にインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)からのスピンアウト企業として設立しました。
MacDonaldはICLの研究者として、独自のディープニューラルネットワークとソフトウェアを使ってタンパク質繊維を設計する技術を開発。分子レベルの設計により、引張強度や弾力性、生分解性に至るまで、繊維の持つ特性を細かく調整することが可能です。
国連環境計画(UNEP)によると、衣料品の約60%はプラスチックから作られていますが、そのうち再生プラスチックを使用しているのはごく一部。
プラスチック廃棄物の3分の1は土壌や淡水に流れ込み、分解されたマイクロプラスチックは食物連鎖を通じて生体内に蓄積。すでに人体内でもマイクロプラスチックが発見されています。
さらに、廃棄される繊維製品の量も毎秒ダンプカー1台分に上るといい、この量は2015〜30年にかけて約60%増加するとの予測も。裕福な国から送られた衣料品が開発途上国でごみの山となっているのも、近年問題視されるようになりました。
個人として最新ラウンドに投資を行ったHardingは、Solena Materialsの技術を「ファッション業界の持続可能性の問題に対する答え」と呼び、「ウェアラブル素材を生物学的に生産することは、衣料品業界における次なる革命を起こせる可能性がある」と語っています。
参考記事:
Solena raises $6.7m to create next-gen textiles using AI and synthetic biology | Imperial News | Imperial College London
UK Startup Raises $6.7M to Scale AI-Designed Microbial Protein Fibres for Next-Gen Textiles
British startup Solena Materials raises €5.9 million to create next-generation textiles powered by synthetic biology | EU-Startups
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