イスラエルのBeliever Meatsが米FDAの認可を取得、世界最大の培養肉工場もついに完成

イスラエルの培養肉企業Believer Meatsが、米国食品医薬品局(FDA)からの認可を取得。市場化に向けた大きな一歩を踏み出すと同時に、ノースカロライナ州で長らく建設を進めてきた生産施設の竣工も発表しました。
米国企業以外では初のFDA認可に
FDAからの「異議なし」レター(ウェブサイトで近く公開される見込み)を受け取ったBeliever Meatsは、米国で規制当局の認可を得た培養肉・シーフード企業としては5社目。米国企業以外では初の事例を作りました。
米国での市販化実現に向けては、これに加えて、生産施設と製品のラベル表示に関する米国農務省(USDA)の審査が必要となります。
エルサレム・ヘブライ大学の教授Yaakov Nahmiasにより2018年に設立された同社は、遠心分離を用いた灌流培養と培地の再利用プロセスを確立して、細胞のパフォーマンスを最適化。必要な水、栄養素、資源を節約しつつ廃棄物をなくすことで、生産コストを削減しています。
昨年には、『Nature Food』誌に査読付き論文を発表し、生体分子を効率的に分離・精製する「タンジェンシャルフローろ過(TFF)*」が培養肉の連続生産において有効であることを実証。
また、リットル単価わずか0.63ドル(約93円)のアニマルフリー培地を導入して、生産コストのさらなる低下を実現しました。
20世紀初頭に自動車産業に変革をもたらしたフォードの自動組立ラインにヒントを得たという新たなバイオリアクターシステムは、細胞バイオマスが1リットルあたり1,300億個まで成長するのを可能にし、43%の高い収率を達成。
生産を5万リットル規模に拡大した場合、培養鶏肉のコストを、USDAの認証を得たオーガニックチキンに匹敵する1ポンド6.2ドル(キロ単価約2,020円)まで下げられると予測しています。
* ろ過したい溶液をフィルターとなる膜の表面に沿って平行(通常ろ過では垂直方向)に流し続け、膜を透過しない大きな粒子を滞留させるようにする手法。フィルターが目詰まりを起こしにくく、大容量のろ過に適しているとされる。
世界初の大規模工場が竣工
新興の培養肉業界でトップクラスの資金力を持つBeliever Meatsはまた、米国南東部のノースカロライナ州に位置する20万平方フィート(約18,600平方メートル)の新工場を完成させました。
1億2,300万ドル(約182億円)を投じたこの建設計画は、2022年末に初めて発表されたもの。途中建設を停止していた期間もありましたが、ついに完成し、年間12,000トンの培養鶏肉の生産が可能となっています。
現在、試運転を行っており、上述したUSDAの審査を経て検査証明書(GOI)を取得するための最終段階に入っているとのこと。
新工場でのプロセス開発にあたっては、昨年ドイツのエンジニアリング企業GEA Groupとも提携を実施し、エネルギー消費の最適化などに努めてきました。
加えて、中東のアブダビにも新拠点設立を計画している様子で、地元機関と協力してハラール認証の取得やイノベーションセンターの設立を検討中です。
参考記事:
Believer Meats Earns FDA Approval & Completes World’s Largest Factory for Cultivated Meat
Believer Meats secures FDA green light and completes world’s first large-scale cultivated meat facility | PPTI News
Breaking: Believer Meats secures FDA ‘no questions’ letter for cultivated meat, completes NC facility
この記事へのコメントはありません。