空気を原料に作られる微生物タンパク質を用いた卵不使用のマヨネーズ、フィンランド企業Solar Foodsが開発

フィンランドのフードテック企業Solar Foodsが、空気を原料に作られる独自の微生物タンパク質「Solein」を用いた、卵不使用のマヨネーズを開発したと発表しました。
この技術は世界で最も普及している調味料の一つを変革する可能性があるとし、すでに技術と製造方法に関する特許出願を済ませて、商業化につなげる意思を示しています。
原料使用量を3分の1に低減
卵業界がサプライチェーンと価格の変動に揺れる中、鶏を炭素で置き換えた唯一無二のマヨネーズが開発されました。
このスプレッドは、ガス発酵由来のタンパク質「Solein」から作られたもの。優れた乳化特性により、マヨネーズ製造において油を乳化させるために使われる卵黄を代替でき、安定した供給と大幅なコスト削減を実現します。
Solar Foodsによると、Soleinは同量の卵黄粉末と比べて3倍の量のマヨネーズを生産でき、食品業界に比類のない価値を提供するとのこと。
最高商業・製品責任者を務めるTroels Nørgaardは、「近年、卵黄粉末の価格は激しく変動している。Soleinを用いれば、企業は固定価格での複数年契約を締結でき、より強くコントロールを握るとともに、疾病発生や気候条件、地政学的問題による急激な価格高騰や市場の混乱によるリスクを軽減できる」とコメントしています。
深刻化する鶏卵の価格高騰
Solar Foodsは、微生物の餌として糖分の代わりにCO₂、水素、酸素を与えて、発酵によりSoleinを生産。
農地、灌漑用水、肥料や農薬が不要な上、再生可能エネルギーを用いるため、排出量は従来の食肉に比べてわずか1%、植物性タンパク質と比べても20%に留まり、「地球上で最も持続可能なタンパク質」とうたわれています。
微生物は液体中で培養され、その後乾燥させて無味無臭の粉末に加工。この粉末はタンパク質78%、脂質6%、食物繊維10%からなり、乾燥大豆や藻類に類似した主要栄養素の組成をしているほか、鉄分とビタミンB群を含みます。
卵不使用マヨネーズの市場は足元で49億ドル(約7,260億円)規模となっており、今後10年間で年率6%の成長を続けて、2030年までに66億ドル(約9,770億円)に達する見通し。
需要拡大の主な要因は、米国で卵価格を史上最高値(一部都市では1個1ドル)に、欧州でも10年ぶりの高値に押し上げた鳥インフルエンザの発生です。
将来行われる価格調整を予期して粉末卵の生産者が原料購入を遅らせる動き*1 もあり、供給不足が深刻化。物価高騰が及ぼしている食品価格全般への影響と相まって、制御し難い状況となっています。
新工場の稼働に向けた商業化契約を確保
Solar Foodsは、シンガポールと米国でSoleinの販売認可を取得済み。シンガポールでは2022年、イタリアンレストラン「Fico」のヴィーガンジェラートに採用され、デビューを果たしました。
さらに、フィンランドの食品大手Fazer(Solar Foodsの筆頭株主)が小売り発売したチョコレートスナックバー「Taste the Future」のベース素材としてや、味の素が展開した月餅やアイスクリームサンドにも使用されています。
米国市場では、昨年ニューヨークの有名レストランで期間限定で提供されましたが、主に健康・パフォーマンス栄養市場に焦点を当てる戦略で、アスリートやトレーニング愛好家のパフォーマンス向上と回復をターゲットとしたプロテインシェイクを発表しました。
今年に入っては、米国のSuperb FoodやイタリアのKelpEatと提携を実施したほか、合計して年間6,000〜7,000トン余りの商業化契約を締結。
2028年までの稼働開始を目指して現在建設を計画している新工場で期待される生産能力、年間12,800トンのうち半分以上を占める量の契約をすでに確保しています。
参考記事:
‘Unmatched’: This Egg-Free Mayonnaise is Made From Air
Solar Foods unveils Solein-powered mayonnaise, filing patent for egg yolk replacement | PPTI News
*1 Egg prices fall in US, rise in Europe
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