培養肉企業のPARIMAとVowが提携、従来より99%低いコストで22,000リットル規模の生産を実証

フランスの培養肉大手PARIMAが、同業のオーストラリア企業Vowが運営する22,000リットルの生産ラインを使用して、採算の取れるコストでトン単位の培養鴨肉の生産を行うことに成功しました。
従来より99%低いコストでマイルストーンを達成
オーストラリアにおける規制当局の承認を待つ中、PARIMAは地元企業Vowとの提携の機会を得て、経済的に見込みのある培養肉の商業生産が可能であると実証しました。
Vowが保有する、食品グレードの細胞培養を行う設備としては世界最大という22,000リットルのバイオリアクターを用いて、一度の稼働でトン単位の培養鴨肉を生産することに成功しています。
PARIMAの共同創業者でCEOを務めるNicolas Morin-Forestによると、両社が提携を開始したのは昨年で、実際の生産に至ったのは今回が初。
培養細胞の収率向上と、高価な成長因子の排除、大規模稼働による効率化の積み重ねによって、従来の生産と比べて99%低いコストでこの画期的な成果を達成しました。これにより、培養肉の規模拡大における「最後の障壁」が取り除かれ、採算の取れるユニットエコノミクス(単位あたりの経済性)が確保されたとしています。
受託製造モデルに転換したVowのインフラを活用
PARIMAは、大型の産業用バイオリアクター内で効率的に増殖する高性能細胞株を用いて、培養鶏肉と培養アヒル肉を生産しています。シンガポールでは両方の販売認可を取得し、オーストラリア・ニュージーランドや欧州連合(EU)、英国、スイス、米国などでも承認待ちの状態です。
生産において、細胞への遺伝子改変は行っていないほか、細胞は食品グレードの培地中に懸濁した状態で自由に増殖するため、製品の構造を形作るのによく使われる足場材にも依存しません。
フランス国内では最大2,000リットル規模の自社施設を保有していますが、より大規模な商業生産にあたってVowのような最適な製造パートナーに依存するモデルを採用しました。
CTO(最高技術責任者)を務めるVictor Sayousは、「当社はプロセスの効率性、生物学的性能、培地コストといった面で、過去数年間にわたり培養肉生産を停滞させ、懐疑的な見方を招いていた技術的な障壁を克服した」と主張。
「最初の試験生産から22,000リットルで稼働させたが、小規模な場合と比較しても性能の低下は見られなかった。当社の技術的進歩をVowが持つような商業規模のインフラと組み合わせれば、この分野に新たな章を切り開くものとなるだろう」と述べています。
シンガポールやオーストラリアのレストランですでに培養ウズラ肉の展開を実現させているVowは、培養肉業界を牽引する企業。
昨年、第2工場における培養能力を35,000リットルにまで拡大しましたが、その建設コストは競合他社と比べて20分の1から50分の1で済んだといいます。また、培養肉業界で史上最大規模という1,500kgの収量を達成しました。
同社は先日、自社製品の生産から、最終製品の受託製造へと事業の軸足を移し、それに伴って創業者のGeorge PeppouがCEOの職をAlex Andrewsに引き継ぎました。Peppou自身もまだ役員として深く関与を続けながら、同社からスピンオフする形で新たにステルス状態のスタートアップ企業を立ち上げ。Vowの細胞農業技術を基盤としつつ、食品以外の市場への展開を目指すようです。
キロ単価10ユーロの実現も時間の問題に
PARIMAの生産モデルについては、以前アーサー・ディ・リトルの分析で、1ポンドあたり3.43ドル(キロ単価約1,220円)までコストを低減できる可能性が示唆されていました。
アーサー・ディ・リトルは先日発行した新たなレポートで、業界に対する強気な見通しを改めて強調。業界のエコシステムは「単に縮小しているのではなく、資本効率の高い運営モデルを中心に再編されつつある」と論じています。
同社は、この1年間に見られた重要な進展を3つ挙げました。それは、食品グレードの培地コストがリットル単価20セント(約32円)に近づき、受託施設を通じた製造サービスが生まれるなど、環境が整備されてきたこと。細胞密度が1リットルあたり55〜100gに達し、産業レベルで通用する性能が確認されたこと。そして、PARIMAとVowによる22,000リットルでの実証が行われたことです。
2026年現在、最終製品のコストはキロ単価40ユーロ台前半ですが、レポートでは2030年までにキロ単価10ユーロ(約1,850円)未満も実現可能と予測。この水準は、多くの観測筋が予想していたよりも近いところにあって、残された課題は規制当局の承認取得や市場の開放へと移行していると述べています。
同社のパートナーClément Santanderは、「技術面に関しては、この分野の初期段階で提起された疑問の多くがすでに解消されている。生物学的なパフォーマンスは現在、発酵などのより成熟したプロセスと同等の範囲にあり、産業規模での生産も実証済みだ」と語りました。
「今後は、生物学的な要素が果たす役割は小さくなり、コスト削減の大部分は生産量や規模の経済によってもたらされるだろう。ビジネスモデルは、すべての資産を自社で保有する形から、専門的なパートナーからなるエコシステムを活用する形へと移行しつつあり、これはかつて成熟したバイオ製造業が産業化を果たした際と同じプロセスだ」と指摘しています。
参考記事:
PARIMA | LinkedIn
Parima Validates Cost-Effective Commercial Cultivated Meat Production with Vow Partnership
PARIMA and Vow’s 22,000L breakthrough signals cultivated meat’s next commercial chapter | PPTI News


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