英国食品基準庁(FSA)、EUとの貿易協定を巡る不透明な状況下で培養肉の認可に関する新ガイドラインを公表

英国の食品規制を担う英国食品基準庁(FSA)スコットランド食品基準庁(FSS)が、新規食品としての培養肉の認可取得を目指す企業に向けたガイドラインの第2弾として、新たな文書4点を公開しました。

企業が自信を持って革新的な食品への投資や開発を行えるよう規制上の要点を明確に示すとともに、市場投入に至るあらゆるプロセスにおいて消費者の安全確保を最優先事項とすることを目的としています。

新ガイドラインの内容


第1弾として昨年12月に公表された2つのガイドラインは、衛生要件、危害分析、そして製品のアレルゲン性や栄養特性を評価するための科学的根拠を扱っていました。

今回新たに発表された文書の1つ目は、これまでの内容をさらに発展させたもので、培養肉生産に食品事業者の衛生規範をどのように適用するかに焦点を当てています。

2つ目の文書は、販売認可に向けた培養肉の評価に必要となる詳細な科学的要件を提示しており、細胞株の特性評価、生産プロセスの説明、微生物学的危害の管理方法などが含まれています。

3つ目は、申請プロセスの改善を目的としたもの。企業がより完全な申請書類を作成できるよう、審査の遅延や追加情報の要求につながる最も一般的な理由に対処し、実践的な推奨事項を示しています。

そして4つ目の文書は、新規食品の試食提供に関する補足情報を提供するものです。企業が研究開発の一環としてこうした試験を行う際の責任を理解するのに役立ち、昨年公表された同様のガイダンス文書を補完する内容となっています。

FSA長官のSusan Jebbは、「食品イノベーションの発展は、より健康的でレジリエントな食料システムの構築を支えるとともに、持続的な経済成長を目指す英国政府の目標にも貢献し得る。しかし、その可能性が実現するのは、規制面が明確になり、企業が自信を持って事業を拡大できる場合に限られる」とコメントしました。

サンドボックス制度の下で審査が進行中


このガイドラインは、英国で現在実施中の「サンドボックス」プログラムを通じて公表されました。サンドボックスとは、企業や研究者が規制当局と協力して、新製品の基準やガイドライン策定を進めながら実証実験を行える環境のこと。

EUの「新規食品(Novel Food)」の枠組みをそのまま踏襲していた英国政府の規制を抜本的に見直す取り組みの一環として、2025年2月にスタートしました。

Aleph FarmsMosa MeatPARIMAといった代替プロテイン業界をリードするスタートアップ企業の参加を得て、2027年2月まで実施される予定。FSAは各社が提出した認可申請の審査を進め、期間が終了するまでに2種類の培養肉製品の安全性評価を完了させたい意向です。

現在のところ、PARIMAの培養鶏肉と培養鴨肉の申請が最も進んでおり、いずれも申請内容の有効性が確認され、リスク評価のプロセスに入っている様子。FSAの協議と閣僚の承認を経て、初の認可事例の成立に期待がかかります。

SPS協定の行方に注目が集まる


英国政府は現在、EUとの間で新たなSPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)の策定についての交渉を行っている最中。

2027年半ばに発効予定のこの新協定は、食品を含む物品がEUと(かつての加盟国である)英国との間を移動する際の利便性を高め、コストを低減させるものです。

しかし、この動きは培養肉企業に波及的な影響を及ぼす可能性も。英国で製品を販売するにあたってEUの規制プロセスを経ることを余儀なくされ、英国が過去数年間で積み上げてきた進展の多くが無駄になってしまう恐れがあるためです。

培養肉の承認を迅速化しようとするFSAの狙いも頓挫するかもしれず、FSAは協定による影響を注視しています。

FSAは4月、承認保有者を含む約600の企業に対し、新たな貿易協定によって英国での承認が無効となり、代わりにEUのプロセスに従う必要が生じる可能性があると警告するレターを送付したと報じられました。EUの規制プロセスは複雑かつ長期にわたる(最大6年を要する場合も)ことで知られています。

幸い、これはヒトの食品にのみ適用されるため、2024年にペットフード用途で承認が下りたMeatlyの培養鶏肉には影響がありません。

FSAの新しいガイドラインは既存の英国の食品関連法を反映したもので、協定の最終的な行方にかかわらず有効。英国のEUのどちらの制度に基づいて申請を行う企業にも有益であり、その他の国・地域における事業者にとっても参考になります。

参考記事:
UK Food Standards Agency Publishes New Guidance for Cultivated Meat Approvals Amid EU Uncertainty
FSA publishes new guidance to help cell-cultivated food companies navigate UK approval process | PPTI News

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