米Biosphereが約13.7億円を調達、ステルス状態から脱却してUV滅菌バイオリアクターを発表

先進的なバイオ生産システムを開発する米国のスタートアップ企業Biosphereが、画期的なUV(紫外線)滅菌バイオリアクターを発表し、ステルス状態から脱却しました。

数十年もの間バイオテクノロジー業界において制約となってきた資本集約度を一段階引き下げる、極めて重要な発明と位置付けています。

米国防総省からも資金を獲得


Biosphereはステルス脱却と同時にシードラウンドの資金調達を完了させ、880万ドル(約13億7,000万円)を確保しました。このラウンドはLowercarbon CapitalVXI Capitalが主導し、Founders Fund、GS Futures、Caffeinated Capital、B37 Venturesが参加しています。

同社はまた、特許出願中の技術を重要なバイオ製品の効率的な生産に応用するため、米国防総省(DoD)150万ドル(約2億3,300万円)の契約を締結。エンジニアリングとスケールアップの取り組みを加速させ、バイオリアクターの迅速な大規模展開が可能になると見込まれています。

Biosphereによると、バイオ産業界は、1940年代にペニシリン製造のために開発された、構造が複雑で高価な蒸気滅菌リアクターに依存しているとのこと。

酵素からオメガ3脂肪酸まで、大型のバイオリアクターを用いた大規模な発酵プロセスでバイオ生産を行う場合、膨大な数の配管やバルブ、ボイラーを備え、大量の水を使用する蒸気滅菌システムを用いて、製造バッチ間にバイオリアクターの滅菌を行うのが通常です。

これにより、目的成分の品質や安全性を損なう副産物を生成したり、栄養分を巡って生産菌株と競合し収率を低下させたりする可能性のある不要な微生物が、システムから排除されます。

しかしながら、このレガシーシステムにかかる莫大な初期費用は、新たなバイオ製品を市場に送り出したいイノベーターにとって大きな障壁となってきました。

蒸気滅菌に比べて迅速化・低コスト化が可能に


Biosphereのリアクターは、このような汚染物質の除去を蒸気ではなく紫外線で行うことで、滅菌プロセスを迅速化するとともに、ステンレス鋼の代わりに高密度ポリエチレン(HDPE)などの安価な材料を用いてコストを削減できる可能性があるといいます。

これまでのところ、ラボスケールでは効果的な滅菌能力を実証できており、現在はより大規模なパイロットスケールのシステムを構築して、業界のパートナーと試験を進めている最中とのこと。

共同創業者でCEOを務めるBrian Heligmanは、「タンクが大きくなればなるほど難易度は下がるので、大規模な商業システムに向けて効果的にスケールアップできると考えている」と語っています。

同社のUV滅菌バイオリアクターは、従来と同じ投資額で10倍の生産能力を実現可能。重要な化学品や最先端の治療薬から、生分解性の包装材や革新的な食品成分まで、幅広い製品の製造に使用できます。

Heligmanは、「このUVバイオリアクターは漸進的な改良ではなく、業界のシステムを再構築するもの。21世紀のバイオものづくりの基礎となり、バイオ製品のリーダー企業やスタートアップが収益を100倍に拡大するための必要なツールを提供する」とコメントしています。

参考記事:
Biosphere ウェブサイト
Biosphere emerges from stealth, raises $8.8m for UV-sterilized bioreactors it claims can slash bioproduction costs

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