培養ミルクを開発するカナダのOpalia、業界史上初の商業契約締結を発表

細胞培養ミルクを開発するカナダのOpaliaが、オランダの大手乳製品・乳原料サプライヤーHoogwegtとの戦略的商業契約を締結したと発表しました。

2年間の供給で培養ミルクの汎用性を実証


この契約は、細胞ベースの乳製品としては史上初の商業的供給契約となり、今後2年間(2026〜27年)にわたって履行されるものです。

両社のパートナーシップでは、6大陸にまたがる130カ国以上の乳製品市場に関するHoogwegtの専門知識と、Opalia独自の細胞ベースの乳製品生産技術を組み合わせ。

契約で定められた供給量については明らかにされていませんが、培養ミルクの汎用性を示すべく、幅広い乳製品用途の製品開発に使用される計画です。

Hoogwegtは、昨年3月にOpaliaが200万カナダドル(約2億1,400万円)調達したラウンドでリードインベスターを務めるなど、以前から同社との関係を構築していました。

CEOのSander Hulsebosは、「今回の購入契約は、将来の持続可能な乳製品のサプライチェーンにおいて、Opaliaを培養ミルクのサプライヤーとして確立するための次なる重要なステップだ」と話しています。

Opaliaはまた、追加で400万ドル(約5億9,000万円)の資金調達も進めており、数週間以内にクローズする予定です。

精密発酵と培養肉の「ハイブリッド」プロセス


Jennifer CôtéLucas Houseにより2020年に設立されたOpaliaは、特許出願中の技術を使ってウシの乳腺細胞を培養してから泌乳させ、本物のミルクを生産。

B2B市場をターゲットに、そのまま牛乳として供給するほか、バター、クリーム、チーズ、ヨーグルトなど、さまざまな乳製品の持続可能な代替品を生み出すことを目指しています。

収穫されたミルクは、牧場で牛が生産するミルクと同様の下流工程をたどりますが、生乳と違って細菌が含まれないため低温殺菌は行いません。

CEOのCôtéによると、すでに不死化した細胞株を樹立しているので、牛から新しく組織を採取する必要がないとのこと。培地に用いていたウシ胎児血清(FBS)のアニマルフリー成分への置き換えにも成功しており、生産コストを大幅に削減しました。

Côtéは培養ミルクの生産を、「精密発酵と培養肉生産のハイブリッドプロセス」と表現。培養肉製品中の筋細胞や脂肪細胞とは異なり、乳腺細胞は最終製品には含まれず、細胞の副産物を消費するという点では精密発酵に似たプロセスだといえます。

収穫後も細胞はリアクターの中に残るため、毎回初めから細胞の増殖を繰り返す必要もなく、効率性の点で優れているとのこと。

また、規制プロセスでは、細胞レベルでの試験における評価要件が緩められる可能性もあるといいます。

同社は現在、米国食品医薬品局(FDA)米国農務省(USDA)の両方から承認を得る必要があり、申請書類を作成中。試食イベントの開催も目標としており、規制当局との連携を進めています。

参考記事:
Opalia Announces “First Ever” Commercial Supply Agreement for Cell-Based Dairy
Exclusive: Opalia Lands First Sale of Cell-Based Milk Ahead of $4M Fundraise
Opalia and Hoogwegt ink deal to launch world’s first cell-based dairy products | PPTI News

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