インドで植物性ミルクと代替肉の税率が引き下げに、ヴィーガン食品をより身近にする施策

インド政府が行った最新の税制改革により、植物由来のミルクや代替肉に課されていた税率の低減が決定されました。新たな税制は今月22日に施行予定で、動物性タンパク質との間に長らく存在していた格差が縮められる見込みです。
植物性ミルクの税率は18%から5%に
インドの物品・サービス税(GST)評議会は、ナレンドラ・モディ首相が先月発表した「全国民の生活の質向上」を目的とする税制改革案を承認しました。
この措置は食品に限らず、化粧品や家庭用品、電子機器、医薬品など幅広い産業にわたる製品を対象としたもの。植物性ミルクや代替肉といったヴィーガン食品については今後、包装済みの動物由来肉・乳製品と同様の課税がなされます。
GSTは、モディ首相の最初の任期中の2017年に導入され、州ごとに異なっていた付加価値税(VAT)やサービス税などの間接税を統合して新たに運用されている税制です。
これまで、豆乳、テクスチャード植物性タンパク質(代替肉の一般的な原料)、ナッツ類、加工済みの果物・野菜には12%の税率が適用され、その他の植物性ミルク製品にはさらに高い18%の税率が課されていました。
一方で、生肉の大半は5%の課税または非課税となっており、生乳に対する課税はありません。
微生物タンパク質も軽減対象
新たな改革により、植物性ミルク、代替肉、その他のヴィーガン食品に対するGST税率は5%に改定。これにより、同様に税率5%に引き下げられるほかの複数の動物性タンパク質(牛乳・バター・ギー・スプレッドを含む飲料、チーズ、ソーセージ、加工肉・シーフードなど)と同等の扱いとなります。
また、不活性酵母と単細胞微生物のGST税率も12%から5%へ引き下げとなり、栄養酵母(ニュートリショナルイースト)や微生物タンパク質も改正の恩恵を受ける見込みです。
非営利シンクタンクGFI IndiaのAstha Gaurは、「植物性食品に対するGST税率の大幅な引き下げにより、植物性乳製品や大豆ベースの肉製品といった代替食品へのアクセスが拡大するだろう」と予測。
「製品が手頃な価格となって減税効果が消費者に還元されるにつれて、政府のこの進歩的な措置が、これまで大きな課題であった植物性食品の消費者層を確実に拡大していくことに引き続き期待を寄せている」と語りました。
植物性食品の普及を後押しする重要な一手に
インドの植物性食品業界は依然として表示規制に直面しており、過去には乳製品メーカーのAmulとMother Dairyによる広告で「植物性ミルクは『ミルク』ではない」と攻撃されたことも。
これには関連団体が乳業大手2社に対して3件の申し立てを行いましたが、インド食品安全基準局(FSSAI)の定義では植物性ミルクが「ミルク」の定義に含まれないことを理由として、インド広告基準審議会(ASCI)に棄却されています。
それでも、伝統的にヴィーガン人口が多く、全人口の13%に上るというインドでは、植物性食品への需要がさらに拡大している向きもあります。
調査結果によると、植物性代替肉を試したことがあるのはわずか11%(代替乳製品は23%)であるにもかかわらず、従来の肉よりも植物性代替肉の摂取量を増やしたいと考える人が多く存在(43%)。
2021〜24年にかけて18%成長したヴィーガン食品市場は、今後10年間でさらに18倍の規模に拡大するとみられ、植物性タンパク質は「日常の食事やスナックに組み込まれ、ヴィーガンを超えた幅広い層を引きつける」見込みです。
この背景には、インド人の60%が乳糖不耐症に悩まされ、37%が食事に植物性タンパク質をもっと取り入れたいと望んでいるという事実があります。
同国における植物性食品消費の最大の推進要因はタンパク質含有量と健康効果ですが、最大の障壁の一つが「価格」。4分の1が、オーツミルクなどはコストパフォーマンスに欠けると考えていることからも、今回の税率引き下げは普及を後押しする重要な一手となります。
税制の公平化を求める同様の動きは特に一部の欧州諸国で進められており、すでに税率に差がない国も存在。ドイツでは、REWE GroupやOatlyが共同で、植物性飲料への軽減税率適用を促す運動を続けています。
参考記事:
India Cuts Tax on Plant-Based Milk & Meat to Make Vegan Food More Accessible
India’s GST reform a credit positive for companies: Fitch Ratings
モディ首相、物品・サービス税の大幅引き下げ発表(インド) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ
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