ドイツが培養肉と精密発酵食品のイノベーションハブ設立を発表、EUに対して商業化を早める施策も要求

ドイツ政府が、培養肉と精密発酵食品のイノベーションハブの設立、そして新たな食品規制の推進を含むバイオテクノロジー・ロードマップを発表しました。
レジリエントな農業・食品システムの構築へ
昨年、ドイツ連邦農業・食料・故郷省(BMLEH)内に設置された、農業政策・栄養・消費者の健康に関する科学諮問委員会が、植物性食品、培養食品、発酵食品への支援を強化するよう政府に提言しました。
BMLEHのアロイス・ライナー大臣に提出された同委員会の報告書は、代替プロテインがもたらす気候変動対策、健康、経済、そして動物福祉上の利点を強調し、動物性タンパク質や従来の植物性食品と並んで、新たな代替プロテイン製品を「共通のテーブル」に乗せる政策を求めています。
すでに欧州最大の植物性食品市場であるドイツは、その提言に応えて、培養肉と精密発酵食品を国家戦略「ハイテク・アジェンダ・ドイツ」の一環として位置付ける新たなロードマップを発表しました。
このロードマップは、ドイツ連邦研究・技術・宇宙省(BMFTR)によって策定されており、ドイツを医療研究とバイオテクノロジーの主要拠点とし、革新的な医療技術を推進し、危機に強い農業・食品システムを構築することを目指すもの。
最後の「農業・食品システムの構築」という目標には、代替プロテインに関するイノベーションハブの設立や、国内で開発された培養肉や精密発酵タンパク質を市場に投入するための技術的マイルストーンの達成などが含まれます。
公的資金による研究活動を統合し、商業化を推進
公的資金の著しい不足は、代替プロテイン分野の大きな問題です。2020〜25年の間に、ドイツは同分野に7,900万ユーロ(約146億円)を投資しましたが、この金額では英国やオランダ、北欧諸国に大きく後れを取っています。
さらに、投資の大部分は植物性食品に集中しており、培養食品や発酵食品に投じられた資金は全体の5分の1程度に過ぎません。
ドイツ政府は新たなバイオテクノロジー・ロードマップの中で、公的資金による研究活動を統合し、企業や研究機関をネットワーク化することで、ポテンシャルを有する既存のイノベーションを活用すると表明しました。
具体的には2027年にイノベーションハブを開設して、2028年までに新規食品の生産コストを競争力のある水準にまで引き下げる計画。その実現には、安定培養における細胞密度を1mLあたり1億個以上に高めること、バイオリアクターのコストを半減させること、培地コストを90%削減することといったマイルストーンが不可欠です。
代替プロテイン業界のシンクタンクGFI Europeは、英国とスウェーデンにある同様のセンターを例に挙げ、そこでは産業界、学術界、政策立案者が協力してオープンアクセスの研究に取り組み、タンパク質転換を推進していると指摘しました。
調査によると、ドイツは近年、代替プロテインに関する科学論文の発表本数が欧州で最も多く、特許件数では4位にランクイン。GFI Europe代表のAlex Mayersは、「この研究能力に見合う政策とインフラを整備するのに時間を要した」とLinkedInへの投稿で述べています。
EUにサンドボックス制度の導入を求める
培養肉や精密発酵食品は、EUにおける新規食品(Novel Food)規制の対象です。複雑で時間と費用のかかるその認可プロセスは、域内でのこれらの製品の普及を阻害し、商業化を目指す多くの企業がほかの地域に目を向けざるを得ない状況を生み出していると指摘されてきました。
このプロセスを迅速化する一つの方法として、規制サンドボックスの設置が挙げられます。サンドボックスとは、企業や研究者が規制当局と協力して、新製品の基準やガイドライン策定を進めながら実証実験を行える環境のこと。
しかしながら、新規食品はEUバイオテクノロジー法(Biotech Act)におけるサンドボックス制度から唯一除外されたカテゴリーであり、世界最大手の食品企業からなる連合もこの決定に反発する中、制度の恩恵を受けられていません。
ドイツのバイオテクノロジー・ロードマップは、新規食品規制を効率的かつ透明性をもって実施する必要性を認識しており、EUに対して、同法に基づいて設置されたサンドボックスに新規食品を含めるよう求めています。
ある調査では、ドイツの代替プロテイン産業は2045年までに年間200億~650億ユーロ(約3兆7,000億〜12兆円)規模の市場を生み出し、最大25万人の雇用を創出する可能性があると予測。GFI Europeは、ロードマップを策定したドイツが、この目標の実現に向けた有望な道を歩み始めたと評価しました。
同団体でドイツ、オーストリア、スイスを担当するIvo Rzegottaは、「培養肉と精密発酵を国家戦略に盛り込んだことは、持続可能な代替プロテインを推進するという連立政権の計画を実行に移すための、最初の重要な一歩だ」とコメント。
「本計画がドイツのイノベーション力と技術主権に与える影響を支えるには、イノベーションハブに十分な資金が確保され、産業界の参加を得て学際的なアプローチで設計されることが不可欠だ」と話しています。
参考記事:
Hightech Agenda Germany: Innovation Hub for Alt Proteins
Germany Announces Cultivated Meat Innovation Hub & Calls for EU Novel Food Sandboxes


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