ブラジルの食肉加工大手JBS、世界最大規模となる培養肉工場の建設に投資

ブラジルの食肉加工大手JBSが、スペインの子会社BioTech Foodsによる、初の大規模な培養肉工場の建設を発表しました。

世界最大規模の培養肉工場に投資


JBSは2021年、BioTech Foodsの株式51%を取得して子会社化。約4,100万ドル(約54億5,000万円)を投じてバスク地方のサン・セバスティアンに工場を建設し、年間約1,000トンを超える培養肉の生産を予定しています。将来的には年産4,000トン規模にまで拡張させる考えです。

2024年半ばまでの完成を目指しており、完成すれば、世界最大規模の培養肉工場となる見込み。

JBSはまた、ブラジル国内の8つの都市で、バイオダイジェスターの設置を公表。こちらも、この種のプロジェクトとしては、ブラジルの同セクターで最大規模の試みとなります。

バイオダイジェスターとは、家畜の糞尿や生ごみを溜めて発酵させ、メタンなどのバイオガスを生成する装置のこと。廃棄物をクリーンエネルギーに変換でき、温室効果ガスの排出削減効果が得られます。

CO₂の28倍もの温室効果があると試算されるメタンガス。反すう動物である牛や羊などの家畜はその主要な発生源であり、人為的なメタンガス排出量の37%が家畜由来とされています*1

JBSによると、これらのバイオダイジェスター設置に伴い、同社のScope 1排出量(燃料使用などに伴う自社からの直接排出量)を65%削減でき、ブラジル全体で見ても同25%近く削減できるとのこと。

悪いイメージの払拭なるか


JBSは長らく、森林伐採に関連して批判の的となってきました。ブラジルは牛肉の最大輸出国ですが、牛の飼育には広大な牧草地と水が必要。同国の牛肉生産は、アマゾン熱帯雨林の多大な犠牲の上に成り立っています。

昨年末に発表された監査レポートでは、JBSが熱帯雨林近くの州で購入した牛の17%(約90,000頭)が、森林破壊に関わる牧場からの購入であったことが明らかにされました*2

JBSは、2025年までに森林伐採に関係するサプライヤーを自社のサプライチェーンから排除することを誓約している十数社の大手農業企業の一つではありますが、この誓約が厳格に守られていないとの指摘もなされています。

今年3月、非営利の動物保護団体World Animal Protectionは、食肉業界が気候変動に及ぼす影響を評価し、JBSを最悪の企業に選出。JBSが関わる工場型農場からの温室効果ガス排出は、年間1,400万台のガソリン自動車に匹敵するといい、同社が「動物と人間の両方から搾取して利益を得ている」と強く批判しました。

食肉大手として、世界のタンパク質需要を支える同社。培養肉へ積極的な投資を行う施策により、悪いイメージを払拭し、サステナブルな企業へと生まれ変われるかどうかが注目されます。

*1 https://www.epa.gov/snep/agriculture-and-aquaculture-food-thought#:~:text=A%20single%20cow%20produces%20between,(Our%20World%20in%20Data).
*2 https://www.reuters.com/business/environment/brazil-audit-finds-17-cattle-bought-by-jbs-came-irregular-ranches-2022-12-15/

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