オランダのFarmlessが、パイロットプラント設置に向けシードラウンドで約7.5億円を調達

オランダのガス発酵スタートアップFarmlessが、パイロットプラント建設と微生物タンパク質に関する研究開発の加速に向けて、シードラウンドで480万ユーロ(約7億4,900万円)の資金調達を行ったと発表しました。

メタノールを栄養源に微生物を育てる独自技術


今回のラウンドは、World FundVorwerk Venturesが共同でリードインベスターを務めました。今年5月に行ったプレシードラウンドと合わせて、累計調達額は600万ユーロ(約9億3,700万円)となっています。

Farmlessは、発酵の主役となる微生物としてメチル栄養細菌(メタノールを消費する微生物)を使用している様子。規制認可プロセスも開始しておらず得られる情報には限りがあるものの、砂糖の代わりに空気由来の原料と再生可能エネルギーを用いた発酵生産を行うことで、完全なアミノ酸プロファイルを持った機能性タンパク質を生産しています。

この技術自体は、Solar FoodsAir Proteinの行うガス発酵と類似していますが、違いはCO₂と水素を合成した液体を原料に用いるところ。また、窒素とミネラルを供給するアンモニアも添加します。

CEOを務めるAdnan Onerによると、液体原料を用いることで、バイオリアクターに投入する際の圧力が少なく済み設備を簡素化できる、輸送などの取り扱いが容易になるといったメリットが得られるとのこと。

液中で微生物を発酵・増殖させた後、遠心分離にかけて水分と微生物を効率的に分離・乾燥させ、このうちの微生物がそのまま、高いタンパク質含有量(60~80%を誇る最終製品となります。

土地利用も必要としない「カーボンマイナス」原料


Farmlessは、「カーボンマイナス」を謳うタンパク質原料の環境影響を測定するため、自社でライフサイクルアセスメントを実施(独立した第三者機関による検証は未実施)。

その結果、タンパク質原料1kgあたりの水使用量が15リットル(牛肉では1kgあたり6万リットル)、土地利用なし(牛肉では同1,600平方メートル)、CO₂排出量が2.2kg(牛肉では同500kg)と、圧倒的な環境影響の低さが明らかになりました。

これは、植物性食品業界で広く使用されている分離大豆タンパク*(水使用量:5,200リットル、土地利用:10平方メートル、CO₂排出量:7.5kg)と比べても、非常に低い値となっています。

今のところ、実際の製品販売にまでは至っていませんが、新規食品(Novel Food)規制の対象となるEUを含む複数の地域で認可申請を行う計画。現在は準備の初期段階にあり、「申請書類の提出までには1~2年かかる見込み」だといいます。

当面は人材確保と、アムステルダムに建設するパイロットプラントでの生産規模拡大に注力。パートナー企業との共同開発に向けた製品サンプルを安定的に生産するほか、研究用のテストキッチンを併設する予定です。

* 大豆から抽出した純粋なタンパク質

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