世界初、英Multusが培養肉生産に用いる無血清培地の大規模工場を開設

英国のバイオテクノロジー企業Multusが、培養肉生産に用いる安価な無血清培地の大規模生産施設を開設したと発表しました。

施設の場所の詳細については、現時点では明らかにされていませんが、食品安全に関するFSSC22000認証を取得しており、年間50万kgの培養肉生産に必要な培地を供給できる生産体制を整えています。

培地生産のアウトソーシングが可能に


Multusは2021年に初の製品として、食品業界で大規模に使用される成長培地「Proliferum M」を発売。その後、食品安全基準に従って生産されていることを保証する、ISO22000も取得しています。

昨年1月には、資金提供プログラム「EIC Accelerator」を通じてInnovate UKから獲得した助成金215万ポンド(約4億500万円)を含む、計790万ポンド(約14億9,000万円)の資金調達に成功。同社が開発する成長培地の大量生産に向けて、歩みを進めていました。

一説によると現在でも生産コストの80%を占めるといい、長らく培養肉の低価格化を図る上での障壁となってきた培地。倫理面、コスト面で問題のあるウシ胎児血清(FBS)を含まない培地の開発も、業界全体の課題でした。

そのため、無血清培地の大量供給が行える新工場は、培養肉業界におけるゲームチェンジャーとなり得ます。

培養肉企業は培地生産をアウトソーシングすることにより、製品の市場投入を加速させると同時に、独自のイノベーションと製品開発にリソースを振り向けることが可能に。培地を自社で開発している企業にとっても、大規模生産に不可欠な培地の安定供給を確保することができます。

培地や成長因子を生産する企業の取り組み


培養肉生産を促進する同種の試みとしては、遺伝子組み換えを施した植物を用いる分子農業により成長因子を生産する、英国のBright Biotech、アイスランドのORF Geneticsなどがあります。

イスラエルのスタートアップBioBetterは昨年9月、分子農業により食品グレードの成長因子を生産する、商業規模のパイロットプラントを開設しました。

その他にも、培養に適した細胞株や、細胞を播種する足場などのソリューション開発を手掛け、Multusとも提携を進める英Quest Meat、アニマルフリーの成長培地を生産するトルコのBiftekなどが挙げられます。

英国のBSF Enterprise傘下の組織工学企業3D Bio-Tissuesも、培地サプリメント「City-Mix」を開発しており、昨年香港に拠点を開設し、中国での商品化を計画しています。

参考記事:
UK Biotech Multus Unveils World’s First Commercial-Scale Serum-Free Growth Media Facility
Bio-manufacturing: The future of food production

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