シンガポール・イスラム評議会が、適切な条件下で生産された培養肉をハラールとみなす見解を発表

シンガポール・イスラム評議会(以下、MUIS)が、培養肉は一般的にハラールであり、基準を遵守している限り同国のイスラム教徒はこれらの製品を食べることができるとするファトワー(イスラム法学に基づく勧告で、法的拘束力は持たない)を発表

イスラム教徒が国民の15.6%を占める同国の培養肉業界の進歩において、次なる重要なステップを指し示す動きとなりました。

シンガポール唯一の認証機関がガイドラインを策定


イスラム教で食べてよいものとそうでないものを厳格に規定するハラール。食肉に関しては、動物は定められた方法で屠殺されなければならず、豚肉など特定の種類の肉や、血抜きのされていない料理などは禁止されています。

2020年に世界に先駆けて培養鶏肉の販売が認められたシンガポールですが、その後ムスリムにとっての許容性に疑問が生じたため、審議を行うことに。

シンガポールで唯一ハラール証明書を発行する法的権限を持ったMUISのファトワー委員会が、シンガポール食品庁(SFA)GFI APACのような業界団体、科学者やその他の専門家を交えた協議を行った上、1年以上にわたる審議を実施。自国の培養肉生産施設を訪問するなど、あらゆる角度から問題を精査しガイドラインを策定しました。

培養肉がハラールとなる基準


具体的には、肉の供給源生産プロセス原材料という相互に関連する3つの側面について調査し、以下の基準を満たせば培養肉はハラールであると結論づけています。

  1. イスラム教徒が食べることを許された動物種から採取された細胞株を用いていること。
  2. 培養肉を構成するすべての原材料がハラールであること。
  3. 製品が汚染されておらず、清潔であること。

このガイドラインは、昨年9月にサウジアラビアのシャリーア(イスラム法)学者がGOOD Meatに対して発表したものと概ね一致しています。

MUISのハラール認証を申請する企業は、シンガポール国内に生産施設を有していることが条件。これは、従来の食肉の製造施設に適用される原則と同様です。海外から輸入される原材料や加工助剤のハラールステータスは、リスクカテゴリーに応じた適切な書類の提出により認証されます。

MUISの声明は、培養肉のもたらす環境と食料安全保障上の利点を概説した上で、このファトワーは「人間の生命および環境を保護する」というイスラムの原則に裏打ちされたものであると主張。

また、「有益なものは何であれ、その有益性が反証されない限りは認められる」というイスラム法の原則も考慮していると述べられています。

世界人口の4分の1を占める巨大市場


ハラールの規定を守る消費者は、世界人口の25%。ハラール食肉市場は毎年7%の勢いで成長しており、2031年には3,750億ドル(約55兆5,000億円)に達すると推定されています。培養肉でハラール認証が取得できれば、イスラム社会で広く受け入れられるための大きな一歩となるでしょう。

MUISのファトワー委員会は昨年1月、代替プロテイン生産は今日の世界において必要だとするファトワーを発表。「目の前の食料源は豊富にあるかもしれないが、今代替プロテインに投資を行うことは、より持続可能な食の未来に備えるのに役立つ」と述べていました。

さまざまな新しいタンパク源を検討しており、昆虫食に関しても好意的な見解を保持。最終製品に有害な要素が含まれていない限りハラールであるとしています。

他地域では、コオロギやバッタを原料とする製品が、インドネシアなど一部の市場で食用としてのハラール認証を取得済み。その一方で、アラブ首長国連邦(UAE)はイナゴを除くすべての昆虫をハラールとはみなしておらず、培養肉に関しても国によって意見が割れる可能性はあり得ます。

参考記事:
BREAKING: Singapore’s Islamic council says cultivated meat can be halal
Halal cell-based meat: Singapore’s Fatwa Committee approves Muslim consumption

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