ゼラチン製の足場を用いてメイラード反応を再現、培養肉の食味向上に期待 —韓国・延世大学

韓国・延世大学の研究チームが、培養肉生産に用いるゼラチンベースの足場を開発しました。『Nature Communications』誌に掲載された論文では、メイラード反応がもたらす風味と香りの効果を再現し、より美味しい肉を作ることができるとされています。

メイラード反応の再現で培養肉をより美味しく


延世大学の研究チームは、ゼラチンをベースにした立体のハイドロゲルを作り、「SFC(switchable flavor compound)」と呼ぶ化合物を添加して足場を作製。これにより、肉を加熱した際のメイラード反応* をシミュレートすることに成功しました。

足場とは、動物細胞の分化と成熟を助ける3次元の構造体であり、培養肉製品の「基本組成」の一部となるものです。

1つの官能基と2つの結合基からなるSFCは、細胞の培養中は安定した状態を保ち、調理(150℃で5分間加熱)されると肉のような香りと風味を放出します。

SFCは、肉ならではの風味以外にも、さまざまな風味を作り出すことが可能。研究では3種類の化合物をテストし、ローストした肉、コーヒー、ローストしたナッツ、タマネギ、ジャガイモの持つ風味の再現に成功しました。

研究チームは、これまでの培養肉は従来の肉の見た目や食感を再現することに主眼を置いており、味は見過ごされてきたと指摘。今後、培養肉が本物として世の中に受け入れられるようになるためには、味が最も重要になると主張しています。

* フランスの化学者Louis Camille Maillardにちなんで名付けられた、アミノ酸と還元糖の間で起こる化学反応。加熱することで独特の風味を持った褐色物質を生成し、食品生産では、製品の着色や香り付けの上で非常に重要な要素となっている。

食用原料にも適用できる可能性


本研究は、商業化の方法ではなく、培養肉の背後にある科学に焦点を当てたものであったため、非食品グレードの物質が用いられました。同じ理由から、香りのテストと比較には、人間の嗅覚システムを模倣した電子鼻(e-Nose)を使用しています。

チームの一員として研究を行ったJinkee Hongによると、「培地などの原料が食用として認可されていないため安全性を保証することはできないが、我々の戦略は従来の食用原料にも適用可能だと考えている」とのこと。

研究チームはまた、ハイドロゲルに使用されるゼラチン(通常、牛、豚、魚の骨や皮から作られる)を置き換えることで、アニマルフリーのプロセスを目指す計画も立てています。

新規食品の進歩を助ける手法に関する研究が盛んな延世大学。本研究を主導したMilae Leeも参加する別のチームは今年2月、コメを支持体に用いてウシの筋肉と脂肪細胞を培養した「牛肉米」という、ユニークなハイブリッド食品を開発しています。

多孔質構造を持ったコメを足場に利用するというアイデアに基づいたこの研究は、面白い試みではあるものの、実用化の点では疑問視されるなど賛否を呼びました。

その後、北京食品科学研究院の中国食肉研究センター(China Meat Research Center)も同様の研究を行っており、培養した鶏肉と豚肉の細胞を組み込んで、肉と米と両方の香りを放つ米を作り出したと報道されています。

参考記事:
Researchers Use Gelatin to Recreate Maillard Reaction for Tastier Cultivated Meat
South Korea: It may look like pink Jello but scientists hope this new invention could revolutionize meat | CNN
This gelatinous meat blob could one day replace beef | BBC Science Focus Magazine

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