アニマルフリーの卵白タンパク質を開発するOnego Bio、欧州イノベーション会議(EIC)のプログラムで約24億円を獲得

フィンランドの精密発酵企業Onego Bioが、欧州イノベーション会議(EIC)アクセラレータープログラムおよびシリーズAラウンドに参加したその他の投資家から、1,400万ユーロ(約23億9,000万円)の資金を獲得したと発表しました。

サプライチェーン上の問題を解消


Onego Bioは今年4月にもシリーズAラウンドで4,000万ドル(約62億7,000万円)調達。今回の追加分を加えて、累計の調達額は6,500万ユーロ(約111億円)となりました。

同社は、食品原料として使われる卵白タンパク質のオボアルブミンと生物学的に全く同じアニマルフリーのタンパク質原料を、精密発酵により生産しています。

Bioalbumen」と名付けられたこの原料は、卵と同じ機能性とニュートラルな風味を持った完全タンパク質でありながら、従来の鶏卵生産による環境負荷を90%軽減し、安定供給が可能。

近年、鳥インフルエンザによる鶏の減少で供給が不足するなど、鶏卵がサプライチェーン上の問題に悩まされている中、代替原料の活用はメーカーにとって非常に魅力的なものとなります。

米国と欧州で商用化計画


Onego Bioは現在、北米でのBioalbumenの商用化に注力しており、今年中に米国食品医薬品局(FDA)GRAS(Generally Recognized as Safe)自己認証の通知を行う予定。

その一方で、今回のEICによる資金提供は、同社がEUでの認可取得と商用化を達成するのに役立つ可能性があります。

EICのプログラムに申請したスタートアップ企業969社のうち、資金提供を受けたのは68社。同社は、事業規模を拡大し新市場を創出する(または既存市場を破壊する)可能性があると判断され、投資対象の基準を満たしました。

EICは、精密発酵が欧州の食品サプライチェーンの持続可能性、効率性、そしてレジリエンスに大きな影響を与える可能性があることを認識。

昨年末に発表された「Work Programme 2024」では、精密発酵と藻類をベースに食品開発に取り組む企業に対し、総額5,000万ユーロ(約85億3,000万円)の投資を行うことが約束されています。

200万リットルの発酵タンク設置を計画


特許を取得したOnego Bioの発酵技術が商業スケールへと規模を拡大すれば、従来の卵との価格競争力を持たせることが可能になるでしょう。

先日、ポッドキャスト「Future of Foods Interviews」に出演した共同創業者でCEOのMaija Itkonenは、バイオリアクターでのタンパク質生産は、将来「真の工場式農業(factory farming)」になるだろうと語りました。

Bioalbumenは昨年、米ファスト・カンパニーの「世界を変えるアイデア賞」食品部門で受賞。環境や安全性、サプライチェーンの問題なしに卵タンパク質の栄養的・機能的メリットを提供できる可能性が高く評価されています。

同社はすでに、焼き菓子、スイーツ、スナック、ソース、パスタ、代替肉など、さまざまな製品におけるBioalbumenの配合を実証するため、大手の食品メーカーと協働。

また、600万羽の鶏が産む卵に匹敵する量のタンパク質を生産できる、200万リットルの発酵タンクの設置計画も詰めている最中です。

参考記事:
EIC Accelerator – 68 deep-tech start-ups in the latest funding round – European Commission
Onego Bio Secures $15.2M for Animal-Free Bio-Identical Egg Protein
Onego Bio Bags €14M in EU Accelerator & Additional Series A Funding for Animal-Free Egg Protein

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