ドイツの養鶏大手PHW Group、新たな子会社設立で精密発酵業界に参入

「WIESENHOF」ブランドで知られるドイツ最大の養鶏業者PHW Groupが、伝統発酵と精密発酵に焦点を当てた子会社の新設を発表しました。

代替プロテインの各分野へ積極的に進出


PHW Groupは、代替プロテイン開発の核となる3つの技術(植物ベース、培養ベース、発酵ベース)をグループ内に統合し、同分野におけるキープレーヤーとしての地位を確立する狙いです。

この拡大戦略の端緒として、2020年より植物性代替肉ブランド「Green Legend」の展開に数百万ドルを投資してきました。

現在、REWEやEDEKAといった大手小売店で販売されている同社の植物性食品は、2022〜23年度に約5,000万ユーロ(約80億6,000万円)の収益を創出。前年に比べ大幅に増加したと報告されています。

昨年には代替プロテイン分野の原料を扱う子会社のVTEC Ingredientsを立ち上げ、今年4月には培養牛肉を開発するオランダ企業Mosa Meatの資金調達ラウンドにも参加しました。

代替プロテイン事業を担当する同社取締役のMarcus Keitzerによると、「精密発酵は代替プロテイン分野のコア技術になると考えていたため、かなり以前から注視してきた」とのこと。

「発酵は、革新的な食品システムを開発するための重要なツールであり、これからもそうであり続けるだろう。新しい技術を理解し評価することは、当社の戦略の一部だ」と述べています。

さらに、同社はバイオマス発酵にも進出し、マイコプロテイン原料の開発を行う計画。業界の主要企業とのパートナーシップ構築も前向きに検討しています。

自然な食品を実現する効果的なツールに


代替プロテイン製品から得られる収益はまだ全体の数パーセントに過ぎないとはいえ、クリーンラベルの健康的な代替食を求める消費者トレンドに乗りたいPHW Groupにとって、植物性食品は重要性を増してきています。

同社は、製品処方の改善により、化学物質やメチルセルロースなどの添加物を削減または排除する取り組みを実施。

Keitzerは、「長期的な目標は、添加物に頼らないできるだけ自然な食品を製造すること。この技術的なハードルを克服する上で、精密発酵とバイオテクノロジーが効果的なツールになると考えている」と説明しています。

各種の発酵技術を確立できれば、植物・動物由来の成分とブレンドしたハイブリッド製品の開発も視野に入れています。

精密発酵の受容性については楽観的


2024年に入って、乳タンパク質、卵白タンパク質、ラクトフェリン、ヘム、脂肪、マイコプロテインなどの製品開発に関するニュースが多数見られ、精密発酵・バイオマス発酵業界は活況を呈しています。

しかしながら、欧州ではこれらの原料の多くは新規食品(Novel Food)とみなされ、市場に出回る前に必要とされる規制当局の認可がいまだ出ていない状況。

また、消費者の受容性に関しても広範な研究はなく、本格的な市場化までには今しばらく時間を要するかもしれません。

Keitzerはこの点について、「市場に出される食品の安全性を保証するために作られた欧州の厳しい規制プロセスは、消費者の信頼を醸成するものでもある。精密発酵のような技術はいずれ受け入れられ、技術がもたらす最終製品の改良により消費者を納得させられるだろう」と語っています。

参考記事:
Poultry Giant PHW Enters Precision Fermentation Ingredients With New Subsidiary

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