アセットライト戦略を推し進めるOatly、シンガポール工場を閉鎖し中国事業に集中

スウェーデンのオーツミルク大手Oatlyが、事業を合理化し黒字化を目指す「アセットライト戦略」の一環として、シンガポールで運営していた製造工場の閉鎖と、それに伴う従業員59名の解雇を発表しました。

35億円を投じた工場を3年で閉鎖


Oatlyのシンガポール工場は、2021年に飲料メーカーYeo Hiap Seng(Yeo’s)との提携により、同社が保有していた工場を3,000万シンガポール・ドル(約34億7,000万円)を投じて改修し、立ち上げたものでした。

年間6,000万リットルのオーツミルクを製造できた同工場の閉鎖により、Oatlyの従業員34名と、共同で運営に当たっていたYeo’sの契約社員25名が影響を受けることになります。

契約解除に伴い、Yeo’sはOatlyから3,200万シンガポール・ドル(約37億円)相当の補償金を分割で受け取ることとなり、2027年1月までに全額が支払われる予定。

Oatlyはコロナ後の売り上げの鈍化、製造コストの上昇、サプライチェーンの問題、ロシア・ウクライナ戦争の影響から、2022年に米国で、2023年に全世界で「アセットライト(資産軽量化)戦略」をスタートさせており、今回の閉鎖もこれに沿った動きとなります。

コスト構造を改善し、設備投資を減らす施策


Oatlyは昨年、米国、英国、中国の3カ所で進めていた工場建設の中止を発表。これに伴い発生した1億7,260万ドルの減損損失と2,900万ドルのリストラ費用が、収益に大きく響いていました。

今回のシンガポール工場でも、それぞれ2,000万~2,500万ドル(約31〜39億円)2,500万~3,000万ドル(約39〜47億円)が、2024年第4四半期の費用として発生する見込み。減損損失については現金支出を伴うものではありませんが、設備売却額を差し引いた分が、2027年までの正味キャッシュフローに影響すると予想されます。

しかし同社は、この移転は将来のコスト構造を改善し、設備投資の必要性を減らすと同時に、欧州工場の稼働率を高めると主張。CEOのJean-Christophe Flatinは、「事業の継続的な簡素化により、一貫した利益の成長を目指し、最終的な使命の達成に向けて焦点を絞っていきたい」と説明しています。

大中華圏の事業に経営資源を集中


シンガポールでのオーツミルク事業から撤退することで、Oatlyは年間1億5,000万リットルというはるかに大きな製造能力を誇る、中国・安徽省の工場に注力することが可能になります。

同社は今年の第1四半期決算報告の際、大中華圏(中国に香港、台湾などを含めた呼称)事業をアジアセグメントから切り離し、後者を「欧州&インターナショナル」カテゴリーに統合させると発表。CEOのFlatinによると、過去2年間のこうした事業再編の取り組みにより粗利益率を改善でき、事業の健全性を確保することにつながっているといいます。

中国の代替乳製品市場は5,000社を超える企業が参入しているとされ、来年にも100億ドル(約1兆5,700億円)に達する勢い。しかしその市場を牽引しているのは、Hebei YangyuanCoconut PalmVieeYinlu Foodsといった地元メーカーです。

これらのブランドは、各カテゴリーの代名詞となるほど圧倒的な地位を占めており、中国市場に参入するOatlyのような外国企業は大きな競争に直面しています。

Oatlyは今年、売れ行きが不調で利益率の低かったSKUを廃止。その後、中国の外食産業に注力し、KFCと火鍋大手のHaidilao(海底撈)とコラボしたアイスクリームを発売しました。

その結果、同地域における第3四半期の売上高は前年同期比14%増2,900万ドル(約45億4,000万円)にまで成長し、大きな収益をもたらしています。

参考記事:
Oatly Shuts Singapore Factory As Part of Asset-Light Strategy, Affecting A Total of 59 Employees
Swedish oat milk producer Oatly to shut down its Singapore facility | The Straits Times
Oatly to close its Singapore plant, 34 employees affected – CNA

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