代替チーズを開発する独Formo、欧州投資銀行(EIB)から約56.4億円をベンチャーデットで調達

発酵によりアニマルフリーの代替チーズを生産するドイツのFormoが、欧州投資銀行(EIB)から3,500万ユーロ(約56億4,000万円)をベンチャーデット* で調達したと発表しました。

この融資は欧州連合(EU)の「InvestEU」プログラムに基づくもので、Formoは発酵プロセスのさらなる開発と規模拡大を進めます。

* 新興企業や急成長中の企業に対して行われる融資の一種で、既存の株主資本を希薄化させることはないが、一般的に金利が高く返済期間が短い。融資判断においては、事業の将来性が評価の対象となることが多い傾向。

発酵技術への関心の高さを示す


Formoは昨年9月に、シリーズBラウンドで6,100万ドル(約95億3,000万円)調達。これは、昨年代替プロテイン業界のスタートアップ企業が調達した中では最大規模の額で、全体的な投資の低迷が続いた中、発酵技術への関心の高まりを反映したものとなりました。

EIBのNicola Beer副総裁は、Formoの発酵技術を「乳製品や卵の代替品に対する需要の高まりに応える、非常に革新的なアプローチ」と評価。

EIBはこれまでにも、デンマークのMatr Foodsが菌糸体タンパク質の工場を開設するにあたり2,000万ユーロ(約32億2,000万円)の融資を行ったほか、オランダの培養肉メーカーMosa Meatが昨年行った4,000万ユーロ(約64億4,000万円)の資金調達ラウンドにも参加しています。

麹ベースのチーズは小売り展開を開始


Formoは、マイクロ発酵(同社独自の呼称)と精密発酵、2種類の技術を使って製品を開発しています。前者は、ニホンコウジカビを培養してニュートラルな風味のタンパク質を生産するもので、特にソフトチーズの製造に適している手法。

麹菌をまずスチールタンクに投入し、糖分や微量栄養素、小麦粉などの炭水化物を含んだ栄養豊富な液体に漬けて増殖させます。麹菌は、これらの栄養を餌にタンパク質を生成。発酵が完了すると、バイオマスと液体(タンパク質を含む)とを分離し、液体の方をスプレードライで乾燥させて粉末状にします。

その後、地元で家族経営を行っている伝統的なチーズ製造業者と協力し、凝固や熟成といった従来技術を使って最終製品に仕上げます。

同社のアニマルフリーの代替クリームチーズ製品「Frischhain」は、昨年9月の調達と同時に、ドイツとオーストリアのスーパー(REWEBILLAMETRO)で小売り展開が始まりました。

今年はカマンベールチーズ「Camembritz」のほか、同じく麹ベースのフェタチーズやブルーチーズも発売を予定しており、加えてスクランブルエッグやベーキング製品の開発も進めています。

精密発酵カゼインの開発にも取り組む


もう一つの精密発酵は、特定の遺伝子配列を注入した微生物の代謝を利用することで、生物学的に同一のカゼインを開発する手法です。

こちらは販売にあたって認可が必要であり、今年中に米国でGRASステータスを得るべく認証プロセスを進めている最中。

母国市場への投入スケジュールは未定で、マイクロ発酵による製品で収益が上がるため急いではいないものの、EUにおける新規食品(Novel Food)の申請書作成にも取り組んでいるといいます。

昨年には、精密発酵カゼインに関連した取り組みを進めるため、ベルギーの同業他社Those Vegan Cowboys提携を実施。菌株樹立からバイオプロセス設計、大規模生産に至る研究開発業務を統合することで、コストを削減し、規制上のハードルを突破して市場参入への道を加速させる狙いです。

参考記事:
Formo ウェブサイト
Formo Secures €35M From European Investment Bank to Scale Animal-Free Cheese & Eggs
Formo: German Sustainable Protein Startup Gets $36M from EU Bank
Formo secures $36m in venture debt funding to scale animal-free fermentation platform

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