英国のPangaia、ヒマシから作られたバイオベースのナイロン代替品を最新コレクションで採用

英国・ロンドンに拠点を置くエコファッションのパイオニア企業Pangaiaが、化石資源によらないバイオベースのモノマーから生まれたスポーツウェアのカプセル・コレクション「(gaia)PLNT Nylon」を発表しました。

強度と多用途性を保ちながら、環境負荷を低減


Pangaia最新のカプセル・コレクションは、イタリアの繊維メーカーFulgarによるトウゴマの種子(ヒマシ)由来の100%バイオベースのポリアミド素材「Evo」を中心に使用。

ジャケットやトラックパンツ、スカートの計6アイテムが期間限定で発売されます。

同社によると、「Evo」は従来のナイロンの強度と多用途性を兼ね備えながら、環境影響を抑えた再生可能な新素材。

原料のヒマシは遺伝子組み換えを施していませんが、水のほとんどない乾燥条件下でも生育し、食用作物と競合しません。ISO規格に基づいたライフサイクルアセスメントによると、従来のポリアミドと比較して排出量を25%削減することが可能です。

コレクションのアイテムは軽量さと速乾性を備え、従来のナイロンの半分の時間で乾き、体温を調節する天然の保温性を有しているとのこと。糸には臭いを抑える抗菌性があり、アクティブウェアにも普段着にも適しています。

エネルギーや水の消費が多いナイロン製造


1930年代にデュポンによって発明されたナイロンは、世界初の100%合成ポリマー素材で、優れた耐久性、柔軟性、強度で人気を博してきました。

現在では、衣料品からシートベルト、エアバッグ、テント、パラシュート、さらには食品包装フィルムに至るまで広く普及していますが、化石燃料を主原料とするプラスチックの一種であるため、問題も抱えています。

CO₂排出量の多さに加え、生分解されないナイロンは適切に廃棄してもマイクロプラスチック汚染を引き起こし、多くの水処理システムではマイクロファイバーが小さすぎて捕捉できないため、水路を汚染する可能性があるといいます。

さらに、ナイロンの製造では、繊維を冷却して布に変える化学反応を促進する際に大量の水を必要とするほか、CO₂の300倍以上の温室効果を持つ亜酸化窒素が発生。2平方メートルのナイロンを製造するのに伴う排出ガスは、ガソリン車で37km走行するのに匹敵するほどです。

バイオプラスチックが毒性を持つケースも


Pangaiaのような革新的な企業が新世代のテキスタイル開発に取り組んでいる一方で、そうした新素材の中には、毒性や環境への影響について試験中であり、よく理解されていないものも存在します。

昨年9月に発表された研究では、ある種のバイオプラスチックは石油由来のプラスチックと同等の毒性を持つ可能性があることが示されました。最もこれは、バイオプラスチックが植物由来であることよりも、化学的な製造工程や必要な添加物が関係したものです。

研究チームは包装材として使用される素材を調査しており、ヒマシの繊維は研究対象には含まれていなかったものの、バイオプラスチックであっても消費者の安全や透明性確保のために試験と規制が必要であると再認識させる重要な知見となりました。

バイオベースナイロンの市場規模は、2023年には18億ドル(約2,600億円)と評価され、今後10年間で倍増する見込み。ファッションブランドが、持続可能性を付加価値ではなく優先事項として、自社の製品を脱炭素化する必要に迫られている中、活用例が増加すると予測されています。

参考記事:
Pangaia Takes on Nylon with Bio-Based Alternative Made from Castor Oil
PANGAIA PLNT Nylon Collection Release Info SS25 | Hypebeast

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