オーストリアの農業関係者が、培養肉の禁止を求める請願を欧州議会に提出

オーストリア、ケルンテン州およびシュタイアーマルク州の農業会議所(Landwirtschaftskammer Österreich)が、欧州議会の請願委員会(PETI)に培養肉に反対する請願書を提出しました。

エネルギー利用の多さと不透明な健康影響を懸念


この請願書は7万人近い署名を集め、2州の農業会議所の所長により提出されました。その中では、農場を保護し、高い食品品質基準を維持することが強調されています。

Eurotoday』の報道によると、ケルンテン州の所長を務めるSiegfried Huberは以前、培養肉は「持続可能な」小規模の畜産・酪農場を脅かす可能性があると発言。

また、この請願の支持者は、カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)が2023年に発表した査読なし論文を挙げ、培養肉生産はエネルギー集約的であり、長期的な健康への影響も不明だと主張しているといいます。

これに対し『Cultivated X』は、有機農場と工業的畜産の環境影響にはほとんど差がないという調査結果を引き合いに出し、小規模農家は持続可能とする考えには疑問が残ると指摘。

一方、現在の培養肉生産プロセスは、エネルギー需要を大幅に下げるまでには至っていないものの、従来の食肉に比べて土地や水の使用量を少なく抑え、周辺水域への排出や温室効果ガス排出といった環境負荷を削減できると期待されています。

EUで進む認可プロセスの停止も求める


健康への影響については、消費者が細胞培養製品を購入できるようになる前に、摂取しても安全であることが確認される必要があり、EUの厳格な「新規食品(Novel Food)」の認可プロセスに判断を委ねるべきでしょう。

欧州食品安全機関(EFSA)は現在、GourmeyMosa Meatの申請に基づき審査を進めている最中ですが、今回提出された請願書は、これらの審査を停止し、オーストリアおよびEU全体で禁止措置を導入するよう求めています。

ケルンテン州農業会議所の委託で以前行われた調査によると、回答者の90%が培養肉を定期的に食べるのに抵抗があると答え、72%が健康上のリスクを懸念し、82%が培養肉技術の禁止を望んでいるとのこと。

同会議所はこの結果を培養肉反対の主張を正当化するために利用しましたが、同州は奥深い田舎の地域であり、オーストリア国民全体の意見を反映していない可能性が高いと考えられます。

こうした反対運動は、植物由来の肉や乳製品のラベル表示に制限を加えようとする、畜産業界の近年の試みとも呼応したもの。ロビイストたちは消費者の混乱と公衆衛生の懸念を論拠としているものの、多くの場合では、市場を脅かす新たな製品に脅威を感じ、市場シェアを失うことを懸念しているのを認めています。

これまで、イタリア(強制力を持つものかどうかは不明)や米国のいくつかの州では、培養肉についても禁止を意図した法制定が早くもなされてきました。今回の請願がEU法に影響を与え得るかは不明ですが、成り行きを注視する必要があります。

参考記事:
Kärnten macht mobil gegen Laborfleisch | Landwirtschaftskammer Kärnten
Austria Presents Petition to Ban Cultivated Meat at European Parliament
Austrian Petition Opposes Lab Meat at EU Parliament – Eurotoday

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