フレキシタリアン層が拡大するドイツ、肉と乳製品の消費量が過去最低を記録

多くの国でヴィーガン食品の売り上げが縮小する中、昨年1.5%の成長で17億ユーロ(約3,000億円)近くに達し、欧州における植物性食品の最大市場となっているドイツ。

ProVeg Internationalが先月発表したレポートで、植物性食品カテゴリーが市場で成功を収めている背景には、植物性タンパク質の生産量が急増している一方、肉と乳製品の消費量が過去最低の水準に落ち込んでいるという要因があると示されました。

Z世代や女性を中心に肉類消費量が減少


政府のデータでは、ドイツ国民の半数以上が自身をヴィーガン、ベジタリアン、またはフレキシタリアンと回答。約5人に2人(39%)が植物由来の代替肉・乳製品を複数回食べており、14%が一度は試した経験があるといいます。

ProVeg Internationalのレポートによると、この内訳を性別や年齢別で見た場合、女性(66%)が男性(37%)を大きく上回っているとのこと。同様に、肉類消費量の減少はZ世代(57%)で最も多く、次いで60歳以上(52%)となっています。

1人あたりの年間肉類消費量は、2022年に52.8kgと過去最低を記録。2024年には53.3kgとわずかに増加したものの、10年前と比べると13%低い水準にあります。中でも、豚肉や牛肉など赤肉の消費量がこの減少を牽引しています。

さらに、牛乳の消費量も昨年に過去最低となり1人あたりわずか46.2kg、10年前から15.5%減少しました。一方、チーズと卵の消費量は、少なくとも2010年以降では最高水準に達しています。

ドイツ連邦食糧農業省の諮問委員会(WBAE)で委員長を務めるAchim Spillerは、「近年、国内の肉類消費量は年間約10kg減少しているが、チーズ消費量の増加によって相殺されている」と指摘。その結果、食品由来の温室効果ガス総排出量はほとんど減少していません。

気候フットプリントが大幅に低いものが多い代替製品は、この「チーズのパラドックス」の解決策として期待されています。

GFI Europeが行った調査によると、ドイツの成人の半数が、肉を減らすか植物性食品を増やすことで食生活を変えたいと考えている様子。とはいえ、環境影響を理由に挙げているのはわずか6%で、主要な動機としては高コスト(25%)、健康への懸念(24%)、味覚嗜好の変化(19%)となっています。

植物性食品の生産が急成長、価格と味は今後の課題に


肉と乳製品の消費が減少傾向にある中、植物性タンパク質の生産は急成長。代替肉製品の生産量は2019年以降毎年のように増加し、2024年までには2倍以上に拡大して1億2,600万トンに達しました。

金額ベースでの生産量はさらに大きな上昇を見せ、同期間で137%の増加を記録し、2024年には6億4,700万ユーロ(約1,140億円)に到達。同様に、植物性代替肉を製造する企業の数も、2019年の34社から2024年には68社に増加しています。

ただし、従来の食肉や乳製品のコストが上がったせいで差が縮まってきたとはいえ、いまだに植物性食品全般の価格はそれよりも高いままで、味の面でも従来品を超えるまでには至っていないのが現状。いずれも、ヴィーガン食品のメーカーが今後克服すべき障壁として残っています。

ドイツではOatlyREWE Groupなどの企業が、植物性ミルクに課される付加価値税率を19%から7%(従来の乳製品と同等)に引き下げるよう政府に要請。特定の消費者層に不利益を及ぼさないための税制改正は社会的にも公正な措置だとして、オンライン署名プラットフォームで多くの賛同を集めました。

WBAEも政府に対して代替プロテインへの公的支援強化を要請しており、「3R戦略」の一環として50を超える政策を提言。3Rとは、肉や乳製品の摂取量を「削減(Reduce)」し、植物由来原料と「混合(Remix)」した製品を作り出すか、代替プロテインで完全に「置換(Replace)」することを目指すものです。

「動物性食品の消費減少は、ベジタリアンやヴィーガンへの移行ではなく、さまざまな理由で摂取量を減らしたいと考える人々によって主に推進されている」とWBAEは指摘。「従って、食品政策において重要なのは、柔軟な削減・代替戦略を通じて段階的な変化を促進することだ」としています。

参考記事:
Meat & Milk Reach Historic Consumption Lows in Flexitarian Germany
Study Says The German Alternative Protein Market Has Significant Growth Potential

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