Moolec Scienceがエンドウ豆の種子からウシミオグロビンを生産、分子農業の画期的な成果に

分子農業のパイオニア企業であり米NASDAQに上場するMoolec Scienceが、遺伝子操作を施したエンドウ豆の種子を栽培して、鉄分を豊富に含むタンパク質であるウシミオグロビンの生産に成功したと発表しました。
分子農業における初の事例に
Moolec Scienceは、「PEEA1」と名付けられたエンドウ豆の種子を用いて、鉄分を豊富に含むウシミオグロビンを安定的に発現させることに成功しました。
種子の世代を超えて一貫した発現を実現し、再現性と遺伝的安定性を確認。エンドウ豆の種子が価値の高い組み換えタンパク質生産のための有望なプラットフォームとなることを示し、新たなマメ科作物への適用にも成功して技術の柔軟性を実証しました。
この成果は、米国の主要学術機関との28カ月にわたる共同研究プロジェクトの一環として達成されたもので、エンドウ豆の種子からミオグロビンが生産されたのは今回が初めてです。
ミオグロビンは、哺乳類の筋細胞中に存在するヘムタンパク質の一種で、ヒトやイヌでは酸素の貯蔵と拡散を促進し、ネコにとっては必須栄養素タウリンの重要な供給源となるもの。また、肉や魚介類の色と鉄分含有量を決定づけるタンパク質でもあります。
研究結果によると、世界人口のおよそ4分の1にあたる約20億人が貧血に苦しんでおり、特に女性、妊婦、5歳未満の子供の間で症例が急速に増加しているとのこと。鉄欠乏は、心不全や妊娠合併症のほか、ADHD、自閉症、子供の運動能力障害などとの関連性も指摘されています。
合併後の混乱を経てブレイクスルーを達成
この鉄分不足を解消しつつ、牛肉生産に伴う大量の汚染と土地利用を軽減するため、Moolec Scienceは分子農業を活用。この技術では、植物細胞を遺伝的に改変して、作物の内部で動物性タンパク質を発現させるように誘導します。作られたタンパク質は、葉やその他の組織から収穫され、食品や飼料の原料となります。
エンドウ豆は「タンパク質を豊富に含む世界的に重要な作物」であり、確立されたサプライチェーンと産業界での採用実績があるため、動物由来原料の代替品生産において非常に魅力的な原料になるとのこと。
CEOのAlejandro Antalichは、「これは単なる科学的なマイルストーンにとどまらず、当社のプラットフォームの拡張性と汎用性を明確に示すものだ。エンドウ豆におけるヘムタンパク質の発現に成功したことで、当社の技術をさまざまな作物や製品カテゴリーに展開する能力を証明できた」と述べています。
2024年、同社の遺伝子組み換えエンドウ豆は病害虫リスクなしと判断され、米国農務省動植物検疫局(USDA-APHIS)から栽培許可を取得しました。今後の商品化にあたっては、さらに米国食品医薬品局(FDA)の承認が必要となります。
同社はまた、分子農業技術を活用したその他の原料ポートフォリオとして、豚肉タンパク質を生産できる大豆「Piggy Sooy」や、栄養価の高いベニバナ油「GLASO」も保有しています。
昨年、Moolec Scienceはやや困難な時期を経験。アルゼンチンのBioceres Group(2020年にMoolec Scienceがスピンオフした元の企業)、精密発酵企業のNutrecon、農業機械メーカーのGentle Techと合併して、その親会社となりましたが、年末にBioceres Groupは倒産手続きを開始し、Moolec Scienceは同社の経営権を失いました。
その1カ月後、財務状況の大幅な改善を受けて、Moolec ScienceはNASDAQの株主資本要件を満たすための期限を今年の6月末まで延長されています。
参考記事:
Moolec Science produces bovine myoglobin in pea seeds in molecular farming breakthrough | PPTI News
Molecular Farming Pioneer Moolec Science Produces Iron-Rich Beef Protein in Pea Seeds


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