海藻由来の食べられるマイクロキャリア、培養肉生産の課題解決に活用 —ノルウェーSINTEF&Nofima研究

SINTEF(ノルウェー工業科学研究所)とNofima(ノルウェー食品・漁業・水産養殖研究所)の科学者からなるチームが、コンブなどの海藻や植物残渣を培養肉生産に利用する新たなアプローチを明かしました。
培養肉生産における技術的な課題の解決へ
研究チームは、ウシ胎児血清(FBS)や合成マイクロビーズといった培養肉生産に投入される従来の原料を、地元で取れる生物資源や食品産業の副産物に置き換えることで、より持続可能な方法で細胞を培養する選択肢を模索しています。
SINTEFの上級研究員Hanne Haslene-Hoxによると、「動物に全く関与しない、またははるかに少ない関与で動物性タンパク質を作るにはどうすればよいか?」という問いが、本研究の原動力となったとのこと。
培養肉は10年以上前から開発が進められ、一部で市場化も実現してはいるものの、技術的な課題は現在でも解決されていません。
開発を進める企業を悩ませている高コストと複雑さの多くは、現状手に入るのが大規模な食品生産には不向きな装置に限られている上、無菌状態を保った栄養豊富な環境で細胞培養を行う必要があることに起因しています。
特に、従来の培養瓶ではわずか1kgの肉を培養するのに700平方メートルの表面積が必要と、大幅な効率化が求められる状況でした。
可食性・生分解性のマイクロキャリア
SINTEFとNofimaの研究者は、スケーラブルな培養肉生産を実現するための改良対象として、マイクロキャリア(細胞が接着して成長する小さなビーズ)に着目。
この微小な足場は、砂糖由来の多糖類であるデキストランで作られることが多くありますが、それ自体は食べられないものであり、培養した細胞をマイクロキャリアから分離するプロセスで資源を大量に消費するばかりか、処理に耐えられなかった細胞の喪失も招いてしまいます。
研究チームはこうした問題の解決策として、ノルウェーで豊富に取れるコンブなどの海藻や植物残渣を材料に、可食性・生分解性のマイクロキャリアを開発しました。
筋細胞を付着させる物理的な基質として、また最終的な食品の一部としても機能するこの足場を用いることで、3次元的な懸濁培養を行う大きな攪拌タンクへとスケールアップする道筋をつけます。
卵殻膜の有用性についても調査
これまでのところ、研究チームは筋細胞の健全な成長をサポートする有望な素材をいくつか特定しており、その一つには卵殻の薄い内膜も挙げられています。
卵殻膜はニワトリの胚発生を助ける役割があり、創傷治癒に役立つことでも知られていますが、筋細胞の基質としての可能性に注目。「筋細胞が卵殻膜の粒子に接着できるかどうか、あるいはアルギン酸と混ぜて細胞を接着させられるかどうかを調べた」と、Haslene-Hoxは述べています。
マイクロキャリア開発の次の段階としては、撹拌タンクでの懸濁培養へとスケールアップさせ、撹拌中に細胞がマイクロキャリアから離れず接着しているかどうかをテスト。成功すれば、大規模培養の条件へとさらに拡大を進める計画です。
プロジェクトはまた、高価で一貫性がなく、食品への使用に適さないウシ胎児血清(FBS)の代替品を見つけることにも焦点を当ててきました。
培地に添加される成分として重宝されるものの、高コストな上倫理的な問題もあるFBSを置き換えるため、研究チームは加工に伴う野菜くず、サーモン養殖から出る残渣、卵の殻、鶏や牛の皮や内臓など、食品産業の副産物から作られた液体栄養素をテストしています。
参考記事:
Where kelp is being turned into lab-grown meat – SINTEF
Norwegian scientists use kelp to cultivate lab-grown meat without animals | PPTI News
この記事へのコメントはありません。